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一番好きなのはⅧの斬鉄剣(著者の好みであって本編とは一切関係ありません) 7月30日(土) 「…………」 「おう、奇遇だな」 翌日、復帰した華凛とともにゲームセンターへと訪れた私を待っていたのは、あの宮下さんだった。確かに昨日、いい勝負が出来るかもと思ってはみたが、まさか本当に宮下さんがくるとは。 この間と変わらぬ黒いコートに鋭い視線。ここに立つだけで私は逃げ出してしまいたくなる。当然そんなことはしたくない。 私は一度だけ華凛の方を見た。私の視線に気付いた華凛は、無言で一回頷いた。 私はそこに“自信を持って頑張りなさい”と言う意味を見い出した。 私は覚悟を決めて筺体の前に座った。 「やるんだな?」 だがしかし、私の決意はその低い声だけであっけなく崩れかけた。 「やります」 一言、私ではなくシリアがそう宣言した。真っ直ぐ宮下さんに向き合い、手を握り込んでいる。心なしか肩が震えている。シリアだって怖いはずだ。手も足も出せず倒されてしまった相手だ。また負けるかもしれないという圧倒的恐怖。シリアはそれに耐えて自ら立ち向かっている。 これが私の見習うべき姿なのかもしれない。 「……やる」 私も再び覚悟を固め、そう宣言した。 宮下さんも一回頷くと無言でコートのポケットを叩いた。すぐに静が飛び出し、筺体の上に着地する。そしてすぐに筺体の中に入り込んだ。シリアもそれに続くように筺体に入る。 私もヘッドギアをつけて、ボタンを押した。宮下さんも同様に。 『神姫ライドシステムを起動します。マスターは椅子に深く腰掛けてください』 いつもの無機質なアナウンス。それなのに、どことなく違うように感じる。 『カウントダウンを開始します。10、9、8、7…』 カウントダウンも、まるで私の緊張に呼応しているように思えてくる。そして…… 『…3、2、1、0、RideOn―――』 バトルが始まった。今回のバトルは強制負けイベントなんかじゃない。正々堂々の本気のバトルだ。 大画面の中で静が刀を握る。その刀は、いつもの光学兵器殺しだった。まぁ、始めはそれだろう。樹羽のボレアスの警戒だ。 (宮下さんは、アレ使うのかしら……?) 2本ある内のもう一本。宮下さんがアレを使うことは滅多にない。使う時は、本気の時だけだ。 (使っちゃったら、バトルにならないか……) 静の武装が純正装備なのは、コストの大半をそれに持っていかれているからだ。使いどころの中々ない、このままでは本当にお荷物になってしまう刀。それを、今日は抜くのだろうか? (抜かれたら抜かれた時、か。あれ……?) 急に視界がぼやけていく。唐突に立ちくらみがして、あたしは思わず壁に背を預けた。頭がひどく痛む。肺が酸素を求めている。ゆっくりと息を吸い、落ち着いて吐き出す。うん、ちょっと楽になった。 (ったく、病気かってのあたしは……) 別に病気な訳ではない。原因はだいたい予想つく。だからこそ、どうしようもない。どうすることも出来ない。 (何であたし、ここまでしてんのかしらね……) 頭に腕を当てながら、今更そんな事を考える。本当に今更過ぎて、なんだか笑えてくる。 でもこれが、今あたしが生きている意味だから。 壁にもたれかかりながら、天井から下がった画面を見つめる。もう勝負は始まっていた。今まさに両者が激突するところだ。 (頑張んなさいよ、樹羽。負けたら承知しないんだから……) あたしはそのまま画面を見続けた。 あたしには見ることしか出来ないから。今も、そして、これからも。 (あれ、やっぱり……変だな……) ふらふらと平行感覚がなくなっていく。両肩を抱いたが、足から力が抜けた。体を支えきれず視界が傾く。頭と肩から床にぶつかったのにも関わらず、何故か痛みはなかった。瞼が重い。あたしの意思に関係なく勝手に閉じようとする。 (樹羽の勝負……見たいのに……) 必死に目を開けようとする。なのに、意識はどんどん深く落ちていく。 その時、誰かがあたしの側まで駆け寄ってきた。 (誰か……呼んでるの?) 誰かがあたしのことを必死になって呼んでいる。樹羽かな? さっき勝負始まったばっかりなのに、もう終わっちゃったの? (ごめんね……やっぱり無理……) あたしは起きようとしたが、そのまま意識は闇の中へと消え去った。 「マスター、早くいこうよ!」 「わーってるよ! 珍しいよな、お前がネタ探し以外でゲーセン行くなんて」 「もちろんそれもあるよ。だけど、あたしもたまには普通にバトルしてみたいんだ。神姫の性ってやつ?」 「神姫の性、ねぇ……」 俺は今、シンリーを連れてゲーセンに向かっている。夏休みに入って特にやることもなかった俺を、シンリーが誘ったのだ。こいつが自分から進んでバトルをしようと言うのは中々に珍しい。神姫であるにも関わらずバトルよりも作曲に興味があるなんて、何度も思うがもしかしてこいつ壊れてるんじゃないだろうか? まぁ、そういうところがいいんだがな。 「? どうしたのマスター?」 「いや、なんでもない」 「……そう?」 そんな話をしながら、俺は歩調を早めた。今日も暑い。早く室内に入って涼みたい気分だ。やがて見慣れた建物の前に辿り着く。 「ほら、着いたぞ」 「よし! バトルが私を待っている!」 「あんまりはしゃぎすぎるなよ」 言いながら、俺は急いで自動ドアをくぐった。途端、冷たい空気に包まれる。あぁ、暑い日はクーラーとかエアコンとかの有りがたみがよくわかる。 人やゲーム器を避けながら、俺たちは神姫バトルブースへとやってきた。今日もいろんな人がバトルしている。 「あれ? マスター、あれって華凛さんじゃない?」 シンリーが指さす先には、秋已がいた。壁に寄りかかって画面を見据えている。 「ん、本当だ。おーい秋已……秋已?」 「なんか、様子変だよ……」 俺たちが話す中、秋已は自分の肩を抱いたかと思うと、そのまま足から崩れた。 「倒れたっ!?」 「秋已っ!!」 駆け寄って呼び掛ける。こういう時、あんまり触らない方がいいんだっけ。 「おい、しっかりしろよ!」 「マスター、脈と呼吸!」 慌てて俺は秋已の口元に手を当てた。幸い息はしている。気を失っただけのようだ。とりあえず一安心。 しかし秋已をこのままにしておく訳にはいかない。また休憩室に運ぶかと思い、秋已の首と膝に腕を通そうとした。 「待ちな」 突然の声に、手が止まる。振り返るとそこには若い女性が立っていた。気の強そうな目尻にハチマキ。だいたい俺と同じか、少し年上ぐらいだ。さらに目を引くのはその服だった。数十年前に廃れ、今では絶対に見ることの出来ないとさえ言われている白の長ラン。そして、目の前のクラスメイトよりも鮮やかな紅い髪だ。 「その子をどうする気だい?」 「ど、どうって、突然気を失ったから休憩室に運ぼうとしたんだよ」 「…………」 あからさまに信用されていない。なんで俺は初対面の人に信用されないんだろう。この間も目の前の女の人が落とした物を届けたら、盗んだんだろっておもいっきり濡衣着せられたし。 「姉貴、前の姉貴に戻ってるよ」 そう言って女性をたしなめているのは、彼女のポケットから顔を除かせているアーク型だった。 「……悪い、紅葉。からまれてるのが知人だとわかっちまうと、どうにも収まりがな」 「いや、からんでねぇんだけど……」 女性は一回深呼吸をした。そしてもう一度こちらを見る。その瞳からは警戒色が薄れていた。 「あんたその子の友達?」 「友達っつうか、クラスメイトだ」 「そっか、悪いね。どうにも男って生き物は信用ならなくて」 「そ、そうか……」 どうやら俺の人柄云々ではないらしい。女性は秋已に近付くと、俺の代わりに彼女を抱き上げた。 「とにかく行こう。話はそれからだ」 「あ、あぁ……」 俺とその女性は、まるで雑木林のような人の波を抜けて休憩室に入った。中にはちょうどよく誰もいなかった。扉が閉まると同時に、ゲーム類の騒音は消え去る。 女性は秋已を備え付けのソファに寝かせると、こちらに振り返った。 「改めて、さっきは悪かったな。あたしは木嶺楓。こっちは紅葉」 「よろしくな!」 「俺は東雲榊。こっちはシンリーだ」 「…………」 てっきりすぐ後に続いてくれるかと思ったが、なぜかシンリーはバックの中で何かぶつぶつ呟いている。 「姉貴……廃れた番長……その内に秘められた想い……」 「……シンリー?」 駄目だ、完全に作曲の世界に入ってしまっている。こうなったこいつは、会話<作曲になるのだ。 「悪い、こうなったらこいつ周りが一切見えなくなるんだ」 「気にすんな。あたしも男に触れられたら周りが見えなくなるから」 「今の内に言っとくけど、不可抗力でも姉貴には触れるなよ。じゃないとあんた、ここの天井か壁に突き刺さる……いや、埋まるから」 訳がわからないが、どうやら触れてはいけないらしい。そう言えば、男性恐怖症の女性マスターがいると聞いた事がある。二年くらい前に聞いたが、なるほど、この人か。割りと目立つのに、二年間一切姿を見なかったな。 「あんた、榊だっけ? この子の連れの樹羽って子知ってるかい?」 「あぁ、一回戦った事がある」 結果はドローだったが、最初からクライマックスなら勝てる自信はある。全てはシンリーのやる気次第だがな。 「なら話が早い。あたしはこの子を看てるから、榊は樹羽ちゃんにこの事を知らせてきてくれ」 「わかった。秋已のこと頼むな」 俺は秋已を彼女に任せ、休憩室を出た。 シンリーは既に鞄の中で端末を使って曲を作り始めている。この間作ったばかりだと言うのに、何故こんなに曲が作れるのだろうか? やっぱりこいつはどこかおかしいのかもしれない。 (この間作ったのは……『夢追うままに努力して』だったかな?) いやにパチモン臭いが、これはこれで人気もあるのが事実なのだ。どこがどういいのか、俺にはわからん。 バトルブースまで戻ってくると、俺はバトルしていると思われる小柄な影を探した。それはあっさり見付かった。まだバトルしている。モニターを見たが、そろそろ終わりそうだ。 (さて、どう説明すっかな……) まぁ、普通に話せば問題ないはずだ。 俺はバトルが終わるのを一人で待った。 第十話の2へ トップへ戻る
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キズナのキセキ ACT1-27「未知との対峙」 ◆ その夜のことを、桐島あおいは忘れたことがない。 裏バトルで敗北し、最愛の神姫を失い、絶望に打ちひしがれた、あの夜。 裏バトル会場の裏口を出た壁に身を寄せてうずくまり、身体を震わせていた。泣いていた。握りしめた手の中には、もはや動くことのないパートナーの残骸。 身動きもとれなかった。泣くことしかできなかった。今夜ここで、神姫マスターとしてのすべてを奪われた。夢や希望は言うに及ばず、プライドも闘志も、装備も神姫も、すべて。 何のために神姫バトルをやってきたのだろう。 その意志すらも、彼女は失いかけていた。 圧倒的な絶望の前に、過去など意味を持たない。輝いている思い出も、今は絶望の厚い雲に蓋をされて、あおいの心の底まで、その光が届くことはなかった。 声を押し殺していても、しゃくりあげる声が、真夜中の路地裏に響く。 それほどに孤独な静寂。 そこに。 「……力が欲しいか?」 しわがれた声がはっきりと聞こえた。 あおいは力なく顔を上げる。瞳からはいまだに涙の滴がこぼれていて、目の前の小さな影をはっきりとは判断できない。 ただ、闇から滲み出してきたようなその小さな姿は、神姫だと思った。 しわがれた声が落ち着いた口調で続ける。 「力が欲しくはないか? そなたの神姫の仇を取る力が」 「ちから……?」 「そうだ」 「……そんなこと……できるわけない……」 相手は金にものを言わせ、カスタムも改造も思うさま行った違法神姫だ。 目の前の神姫は明らかに素体のまま。あおいがまだ残している少々の武装で勝てる相手ではない。 だが、目の前の神姫は言い切った。 「できる。わたしならば、あの程度の神姫、雑魚に過ぎぬ」 「そんな……そんなこと……」 「力を望むなら、我が手を取れ、桐島あおい。我が力で、そなたの大切な神姫を奪った連中に復讐するがいい。わたしは絶対の勝利を約束しよう。そのかわり、そなたはわたしの復讐に手を貸すのだ」 「ふくしゅう……?」 「そうだ、復讐だ。あのバトルで、そなたの神姫……ルミナスは破壊されるいわれなどなかった。あのような外道……神姫を破壊して悦に入っているような輩には、同じ地獄を味あわせてやればいい。あのバトルに歓喜していた連中も同様だ。そなたには復讐する権利がある」 復讐。 その言葉に、あおいの両の眼が開かれる。 そう、復讐だ。 ルミナスには、あの子には何の罪もない。愚かなわたしに命じられて、必死に戦っただけなのだ。 破壊される理由などありはしない。完膚なきまでに破壊し、殺す理由などありはしない。 自分の快楽のためだけに、優しい神姫を殺す……それは罪ではないのか。そんなことを平気でする連中が今日も高笑いしながらはびこっている。ルミナスのように破壊される神姫が、そしてわたしと同じように絶望に打ちひしがれるマスターが、これからも現れるかも知れない……いや、確実に現れる。 ならばどうする? ルミナスの無念を誰が晴らすのか。これから絶望に落ちるかも知れない神姫とマスターを誰が救うというのか。 あおいは目の前の神姫と視線を合わせた。 なんと昏い眼をした神姫だろう。 しかし、その昏い視線から、底知れぬものをあおいは感じ、身震いした。 「勝てるの、あなたなら?」 「言ったであろう。絶対の勝利を約束しよう。ただし、そなたの復讐の後は、わたしに力を貸せ」 「……わたしの復讐は、あいつを倒すだけじゃ終わらない。このエリアの不良マスターたちを根絶やしにする……それができる?」 「造作もない。思う存分やるがいい」 「……わかったわ」 あおいは一つ頷いた。 目の前の神姫は、変わらず昏い眼のまま、表情一つ変えず、生真面目な口調で言った。 「……契約成立だ。証にこれを」 黒い神姫が抱えていたのは、小さなワイヤレスヘッドセットだった。 あおいはもはや何の疑問も持たず、そのヘッドセットを受け取り、耳に付けた。 この日、桐島あおいとマグダレーナ、二人の復讐は始まったのだ。 ◆ 二人はお互いの得物をぶつけ合い、再び鍔迫り合いとなった。 ミスティは正面にある神姫の顔を見る。 マグダレーナの顔は、怒りと焦りに歪んでいる。 ミスティは今まで、裏バトル会場などで何度かマグダレーナの姿を見てきた。けれど、これほどに追いつめられた彼女を、ミスティは見たことがない。 そして、未だかつてないほどにマグダレーナを追いつめているのは、紛れもなく自分だった。 交差した剣と槍の向こう側から、マグダレーナがしわがれ声を発する。 「絆など……何の実体もないただの思い込み……そんなものに何の価値があるっ!」 「寂しい奴ね、あんたは」 ミスティはふっと優しく微笑みかけた。 「絆ってのはね、双方向なのよ」 ミスティは思い浮かべる。 自分と菜々子、自分とティア、自分と他の神姫マスターや神姫と繋がっていく絆。 それはまた、繋がった先の人や神姫からも伸びて、また繋がっていく。 広がっていく絆の軌跡は、まるでシナプスのように描き出される。 あるいは蜘蛛の巣のように。 ウェブ。 そう、それは…… 「絆ってのはね、ネットワークなのよ」 「ネットワーク……だと?」 「誰かと誰かが繋がって、またその先の人と繋がって、またさらに先の誰かと繋がって……どんどん広がっていく。しかも双方向。お互いがお互いのことを考える、助け合う。そしてみんなが幸せになれる。それが絆だわ」 「言っただろう……そんなもの……幻想に過ぎん!」 「幻想じゃないわ。その証拠に、みんなとわたしの絆が力になって、こうしてあんたを追い詰めてる」 「……思い上がるな!!」 マグダレーナは槍をはじき、間合いを取る。 ミスティは間髪入れずにダッシュする。 漆黒の修道女型は、間合いを保たん後退する。 「あんたは遅いのよ!」 叫びとともに、ミスティがダッシュ。両脚のホイールを回転させ、地面を滑りながら間合いを詰める。 「あんたの機動は、ティアにも、リンにも、シルヴィアにも及ばない!」 いとも簡単にミスティは間合いを潰して、斬りかかる。 マグダレーナはかわせず、エアロヴァジュラの一撃を捌く。続いて、ミスティの副腕による連撃。これも捌くが、ビームトライデントだけでは限界がある。腕やブルーラインの装甲が少しずつ削られる。 後退し続けてはジリ貧だ。マグダレーナは無理矢理踏み込んだ。 ミスティも踏み込んでくる。 力任せに得物をぶつけ合った。 また鍔迫り合いとなり、ミスティと視線が絡む。 「……弱い踏み込みね。ねここの突進に比べたら、蝿が止まったようなもんだわ」 嘲りの言葉に、マグダレーナは苛立つ。 力任せに押し返すと、今度は三つ叉槍を構え、連続突きを繰り出した。 速さは神速、狙いは正確。 あやまたず急所を貫くはずの槍はしかし、すべて刀と副腕によって捌ききられた。 「そんな連続技、フェフィーやランティスのコンボに比べたら、全然ぬるいわよ!」 マグダレーナは攻撃の手を止めない。 しかし、三つ叉槍一本の攻撃には限界があった。 ミスティはマグダレーナの連続攻撃を捌ききってなお、攻撃を当ててくる。 そう、攻撃が当たっているという事実が、マグダレーナに屈辱を与えていた。 亀丸重工の軍事研究所謹製のMMSボディは特殊な素材でできており、市販品の武装神姫の攻撃でダメージを受けることはない。あのファーストランカー『街頭覇王』の必殺技すら凌いでみせたのだ。 目の前の神姫からダメージなど喰らうはずがない。 はずだった。 「……なにぃっ……!?」 ミスティから繰り出される、すくい上げるような副腕の一撃を、からくもかわしたマグダレーナが声を上げた。 爪がかすめた腹部に、薄い裂傷ができていた。 気づけば、腕にも肩にも小さな傷ができている。 いずれも、ミスティの副腕の攻撃が当たったところだ。 ダメージ自体は微々たるものだが、自分を傷つけることが可能、という事実に、マグダレーナは驚き、そして……恐れを抱いた。 なぜだ、なぜ奴は私に傷を負わせることができる!? マグダレーナの問いは口に出す直前で消えた。 ミスティは誇るようにマグダレーナに告げる。 「あんたは弱い……マイティや雪華の方がよほど手強かったわ」 ミスティは今、実感している。あの特訓が……みんなとの絆がわたしを支えてくれている、と。 □ 「すげぇ……ミスティが押しまくってるぜ……!」 大城の感嘆に、俺は小さく頷いた。 今のマグダレーナは見るからに余裕がない。 彼女は下がらざるを得ない。なぜなら、ミスティの攻撃が当たれば、自らのボディが損傷する恐れがあるからだ。 『街頭覇王』三冬の必殺技の直撃を喰らってもボディは損傷しなかった。並外れたボディ強度も、彼女の余裕に繋がっていたはずだ。 だが、ミスティの副腕の爪は特別製だ。人工ダイヤモンドの欠片を研磨し、仕込んである。いくら丈夫な素体とはいえ、この世で最も硬い鉱物の爪で鋭く攻撃されれば、無事では済むまい。 それに、特別製のボディは丈夫だろうが、装備は違う。ボディよりも注意を払わなくてはならない。特にブルーラインはマグダレーナの機動を支えるものだ。破壊されれば、逃げようがなくなる。 マグダレーナにとっても、これほどに押し込まれて後退を強いられる戦いは初めての経験に違いない。 バトルの主導権はこちらが取った。あとはこのまま押し切って勝てればいいのだが。 ◆ ミスティの猛攻が続く。 滑るように前に出ながら、マグダレーナに対し、次々に攻撃を繰り出す。 マグダレーナは下がる。 「ブルーライン」の浮遊機能を最大限に利用しながら、ミスティの攻撃を捌き続ける。 マグダレーナは防戦一方だ。 表情は苦しく、いつもの余裕はまったく見られない。 マグダレーナは苦し紛れに、攻撃予測スキル「スターゲイザー」を起動する。この短いバトルの間に入手したミスティの戦闘データを元に、この先の攻撃を予測、視界にその軌跡を赤いラインで表示する。 瞬間、無数のラインが表示され、視界が赤く染まった。 攻撃が絞りきれない。 迫るミスティからは、あらゆる方向から攻撃が来る可能性がある。 どうすればいい。 スキルなしに、どうやって相手の攻撃を見切り、攻撃に転じればいい!? マグダレーナはその疑問に行き着き、そして愕然とする。 そう、彼女は今まで自分のスキルに頼りすぎていた。 だから、想定外の相手と戦うことはほぼなかった。未知の相手に対し、反撃の機会を掴むことさえ、マグダレーナはできない。 ならば、他の神姫はどうやって戦っているというのか。行動予測もなしに、どうやって未知の相手と対峙する? マグダレーナがそう考えた時、戦場に声が響いた。 「ミスティ、三連撃から連続突き! 下から上へ、攻め上がりなさい!」 声の主は、久住菜々子。 ミスティはマスターの指示を忠実に守りつつ攻めてくる。それはマグダレーナが分析したミスティの行動パターンを逸脱したものだ。 久住菜々子の指示は「女の勘」に頼ったものだと言う。その場の閃きや感覚による指示はパターン化できない。今までの戦闘データの蓄積があればともかく、データなしの今の状況では、法則を導くことはできない。 久住菜々子こそがミスティの戦闘行動に無限の可能性を与えているのだ。 それこそがミスティの強さの秘密なのか。 いや、違う。 マグダレーナは気付く。 普通の武装神姫ならば、当たり前の関係……神姫とマスター、二人でバトルに挑むということ。マスターは戦況を分析し、敵の動きを見ながら、作戦を立てて指示を出す。神姫はその指示の元に戦う。 マスターのバックアップがあるということは、なんと心強いことだろう。 それでは自分はどうだ。 人間を憎み、マスターは持たず、自分の力のみで戦ってきた。背後を守ってくれるマスターはいないし、必要性も感じていなかった。 だが、今や頼りにしてきたスキルは無効化され、実力をまったく発揮できない。 しかも、相手神姫の武装は未知、相手マスターはパターン化できない思考の持ち主。相性は最悪だ。 負けるのか。 このまま押し込まれ、目の前の神姫に倒されてしまうのか。 人間との絆を憎悪してきたわたしが、絆を肯定するこの神姫に敗れるというのか。 この不敗を誇るマグダレーナが。 「……くそっ」 吐き捨てた短い言葉は、マグダレーナが初めて発した弱音だった。 その時、 「マグダレーナ! 十二時方向にコーン発射、同時に四時方向に後退、距離二!」 聞き慣れた声で指示が飛んできた。 マグダレーナは反射的に、その指示を忠実に実行していた。 ◆ 「ミスティ、後退! 避けて!!」 菜々子の焦る声がミスティの耳に届く。 マグダレーナを追い詰めている最中だというのに何を言い出すのか、と思いもしたが、ミスティもまた反射的にその場を飛び離れる。 次の瞬間。 二人が攻防を繰り広げていた地点にミサイルが着弾、爆発した。 「な……」 轟音とともに広がる爆炎が、黒い神姫の姿を覆い隠す。 菜々子の指示を聞いていなければ、ミサイルはミスティに直撃していただろう。 そもそも、ミサイルはどこから飛んできたのか? ミスティが思考を巡らせていると、 「動きなさい、攻撃が来るわ!」 またしても菜々子の鋭い指示。 攻撃? 何の? ミスティの一瞬の逡巡。それが彼女の行動を遅らせた。 突如、爆炎を貫いて、銃弾が飛来した。 避ける間もなく、銃弾は背後のアサルトカービンの片方に直撃した。 「な、なに……!?」 ミスティは焦る。 マグダレーナが持っている武装は、ビームトライデントだけだったはずだ。なのになぜ、銃撃が来るのか。 爆炎が晴れていく。 機動を続けながら、ミスティは見た。 爆炎の向こう、相対するマグダレーナの手には、ハーモニーグレイス型のデフォルト装備「クロス・シンフォニー」が握られている。 それはマグダレーナのサポートメカに装備されていたものだ。 ミスティは理解する。 ミサイルもサポートメカに装備されていたものだ。独立して行動することはできなくなったが、マグダレーナが直接装備を使う機能は生きているのだろう。先ほども遠野にミサイルを撃っていた。 ミサイルは距離を取るための布石。 案の定、ミスティとマグダレーナは飛び離れた。爆炎で姿が見えない隙に、サポートメカの残骸に残された「クロス・シンフォニー」を拾い上げたのだ。 クロス・シンフォニーの銃口はミスティに向けられている。 マグダレーナの態度にも少し余裕が戻ったように見える。 何があったの? 自問自答する。 ミサイル攻撃の前、飛んできた声。指示があった。マグダレーナのマスターから。 つまり……桐島あおいから。 ◆ 久住菜々子は軽く突き飛ばされた。 たたらを踏んで、二三歩後ろに下がる。 「お、お姉さま……?」 突き飛ばした本人……桐島あおいは、頭を押さえながら、ふらふらと立ち上がる。 いまだ吐息は荒いまま。 しかし、戦場を見て、また菜々子を見つめる瞳は、はっきりとした意志が宿っていた。 「悪いわね、菜々子……絆よりも何よりも、強さを望んだのは……わたし。ルミナスの復讐のために、操られていると知りながら、それでもマグダレーナの無類の強さを望んだのは、わたし自身の意志なのよ!」 「そんな……」 「強くなければ、自分の意志も貫けない。それどころか、外道な連中にいいように弄ばれるだけ。 ……そう、弱さは罪。すべてを失い、絶望に落ち込み、たどり着いた……それがわたしの真理」 「……」 一瞬の沈黙。 あおいは脂汗を流しながらも、口元で微笑んだ。 「わたしとマグダレーナのコンビは不敗。……でも不思議ね。追い詰められている今この状況に、今までで一番ドキドキしてる」 「お姉さま……」 菜々子は確信する。あおいは強さの権化となり果てたわけではない。互いの死力を尽くすギリギリのバトル、その緊張感をも楽しむことこそ、菜々子が追い求めてきたバトルの形だ。 「そういう気持ちも尊いと教えてくれたのはお姉さまですよ?」 「そうだったかしら」 「そうですよ」 「だとしたら、この気持ちも否定しなくちゃならないけれど……少しもったいないわね」 「別に否定する必要なんてありません。その気持ちには価値があるんです。バトルの勝敗以上に」 「残念だけど認められないわ」 「認めさせてみせます……わたしたちが勝って」 「させないわ……行け、マグダレーナ!」 「走れ、ミスティ!」 二人のマスターから指示が飛ぶ。 ミスティとマグダレーナは同時に地を蹴った。 ◆ バトルは一進一退の攻防となった。 マグダレーナはミスティに比べて手数が少ない。しかし、火力に勝り、盾としても機能するクロス・シンフォニーを手にしたことが大きい。 銃撃で接近を図るミスティを牽制し、接近戦でもビームトライデントとクロス・シンフォニーを巧みに使って、ミスティの格闘攻撃を捌ききる。 逆にミスティは攻め手を欠いていた。 マグダレーナの銃撃は裏バトルでのリアルバトルを想定しているから、破壊力は段違いだ。迂闊に飛び込むことはできない。 それでもなんとか格闘戦に持ち込んでも、十字架状機関銃をシールドがわりにして、マグダレーナ本体に攻撃を当てさせない。 しかも、今まで後退一方だったマグダレーナが攻めに転じてきている。攻撃パターンの変化の理由は明らかだった。 桐島あおいの指示だ。 彼女の指示は的確で、神姫マスターとしての実力が伺える。その指示をマグダレーナは忠実に実行している。 マスターがいるといないとではこれほどに戦闘力が変わるものなのか。今更ながらに理解したその事実に、ミスティは戦慄した。 ◆ 決め手を欠いているのはマグダレーナも同じだった。 あおいの指示が来るようになって、互角の立ち回りができるようになったとはいえ、戦況はむしろ不利である。 ミスティのレベルアップは著しく、なおかつこちらの絶対有利なスキルは封じられたままだ。 装備の差も大きい。 ビームトライデントもクロス・シンフォニーも火力の面では申し分ないが、連続使用には心許ない。 クロス・シンフォニーは弾切れした一丁を捨て、残る一丁を拾って入れ替えている。 ビームトライデントの出力はもうすぐ限界だ。ビーム装備は電気をやたら食うのがネックである。 元々、マグダレーナは短期決戦が前提の装備だから、バトルが長引くほどに不利になるのは当然のことだった。もちろん、今まで残弾を気にするほどバトルを長引かせたことはなかったが。 「くそ……」 マグダレーナが短く吐き捨てる。戦況を好転させる手段がない。焦りばかりが募ってゆく。 その時だ。 「マグダレーナ、あれを使うわよ!」 あおいからの指示に、マグダレーナは目を見張る。 「あれをか!? こんな市販品ごときに……!」 「だけど、このままじゃ勝てないわ。わかるでしょう?」 あおいに言われるまでもない。このまま戦闘を続けてもジリ貧なのは、彼女が一番分かっていた。 「……仕方あるまい!」 マグダレーナがミスティの猛攻を避けながら後退する。 「させないわ!」 ミスティは追いすがる。 何が来るかはわからない。しかし、このバトルでこれ以上相手に有利な要素を与えるわけには行かなかった。 距離を詰めるミスティ。 そこに、 「コーン発射! 十二時方向!」 またしても桐島あおいの指示。先ほどと同じだ。四発目……最後のミサイルが来る。 「くっ……!」 そうと分かっていては、ミスティも方向転換せざるを得ない。 ミスティは進行方向を横にスライドし、マグダレーナから距離を取る。 果たして、ミサイルは来た。 マグダレーナの正面、追い続けていれば、ミスティがいたであろう地点に着弾、爆発する。 紅蓮の炎と漆黒の煙が、再びマグダレーナの姿を覆い隠した。 この煙幕の向こう、マグダレーナはいったい何をしようとしているのか? ◆ あおいはコートの内ポケットに右手を差し入れ、何かを取り出す。 そして、そのまま広場の中へ……戦場へと放り投げた。 菜々子は見ていた。それは剣だ。長い、神姫の身長ほどもある長大な剣。 このバトルで装備の追加はルール違反ではない。元より、そんな規定はリアルバトルにはない。 その長剣は、マグダレーナのすぐそばに落ち、地面に突き立つ。 マグダレーナは手にした三つ叉槍と十字架銃を捨てた。 間髪入れずに長剣の柄を握り、地面から引き抜きながら加速する。 突撃。 「ミスティ! 奴の武器は剣よ!」 菜々子の言葉より早く、マグダレーナは爆炎の中へ飛び込んだ。 ◆ 菜々子の言葉がミスティの耳に届くのと同時だった。 炎と煙が巻き、突如空気のトンネルが出現した。そう思う刹那、漆黒の神姫がその中を弾丸のように突き抜けてくる。 瞬足にして無音、フィールド発生を利用して炎の壁に穴を開け、低空を飛翔する……ブルーラインの真骨頂とも言える使用法だ。 ミスティは思わず足を引いた。黒い弾丸を回避しようと後退する。 マグダレーナは瞬く間にミスティの目前に着地、長剣を上段から振り下ろした。 ミスティは上半身を下げ、回避の姿勢。 早めの回避が功を奏した。長い剣ではあるが、その間合いは見切れた。鈍色に光る鋼の長剣の切っ先はミスティに触れることはなかった。 続けて、マグダレーナの切り返し。 ミスティがさらに間合いを取ろうとする。 その時。 「!?」 長剣が、うねり、伸びた。 ミスティが掴んだ間合い、タイミングを覆し、長剣の切っ先が上に伸びたところで横薙ぎに変化する。 精一杯にかわしたミスティの頭上を刃風が舞う。 いやな音と共に、背部にマウントされていたアサルトカービンが、接続部からごっそりと奪われた。 「な……なにあれ……」 銃器が破壊された以外のダメージはない。 しかし、その結果以上に、ミスティの意識を引き付けたのは、マグダレーナの鋼の長剣だった。 その姿は異形。 一本の鋼と思っていた刃はいくつもの節に分かれ、動力パイプによって一本につながれている。今はまるで鞭のようにしなり、地面に垂れていた。 まるで鋼でできた蛇だ。 ミスティは先ほどの攻撃を見誤った理由も理解した。 蛇腹になった分、剣の全長が伸び、ミスティの間合いを狂わせたのだ。そして、蛇腹の剣は鞭のように動き、縦から横へ自在の動きを見せて、ミスティの想像を超えた。 今、その鋼の蛇は、先端を持ち上げ、鎌首をもたげている。まるで、ミスティを威嚇するように。 しわがれた声がミスティの耳を叩く。 「断罪剣……ソリッドスネーク……これを使わせたのは、貴様が初めてだよ……もう、楽には殺さん……」 それは地の底から響く魔女の声のよう。 ミスティは戦慄しながらも、手にした刀を構え直した。 次へ> Topに戻る>
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斬馬刀という言葉がある 文字通り馬すら切断出来そうな程大きな刀の事だ そこからもじって、鬼を切れそうな刀は「斬鬼刀(鬼太刀)」、戦車を切れそうなのは「斬車刀(注1)」というわけだ 同様に「斬姫刀」という言葉が、あまり一般的ではないが使われる事がある 那俄世 源八郎 稀代の刀匠であったが、彼の最高傑作はまさにその「斬姫刀」であると伝えられている つまりは武装神姫を斬る為の刀だ 「鬼葬」あるいは「姫葬」・・・いずれにしてもその為に作られ、使われるのが「銘刀」であるならば、 「鬼奏」あるいは「鬼操」の為に作られ使われるのが「魔剣」であろう 神浦 琥珀 神姫の為の魔剣を打つ事が出来る、現在唯一の「ナイヴスロッテ」 鳳凰杯決勝リーグ第二試合・・・ この闘いは 二人の刀匠の闘いでもあった 鳳凰杯編 「器創、鬼奏、姫葬・・・即ち競う」 翠と白の刃が、舞う はなから小細工を弄するつもりは、クイントスには無かった 携えるは『鳳凰』彼女の音速剣を無制限に使用可能にする、『不壊の刃』だ だが、武器の優位に頼んで勝ち切る事は今のクイントスには不可能だった 那俄世 源八郎の・・・斬姫刀 そして使い手は「白い翼の悪魔」・・・!! 今大会のレベルの高さを象徴するひとりである 「どうやって位置を!?」 残影と虚像、特殊ステルスシステムを駆使して隠れる『ミチル』の位置を把握出来たのはこの攻撃で二度目、ただし、有効打は与えられない様だが 『下がって!もう一度仕切りなおすのだ!』 落下するクイントスの剣が空を切る マスターと神姫の連携は・・・かなり悪くない (それにしても・・・かすりもしないとはな・・・) クイントスはかなり疲弊していた 視力で捕らえる事が不可能な相手を、気配と音だけで裁いている訳だが、絶対に回避が不可能なタイミングで来る事と、装甲が余り役に立たない事が、実際以上に彼女に疲労感を与えていた 結局、『鳳凰』の『不壊』に頼って無様に受け止め続ける事七度、剣が並みのものなら既に5,6回死んでいる事になる (加えて、『無風剣』とはな・・・) ミチルの剣閃は「斬られた事に気付かない」と言われる程に鋭い・・・そして事実、殆ど空気を震わせる事無く迫る二刀流は、防御に徹してすら裁き切る事が困難に極まる 流石は世界大会72位という事か 体勢を半ば崩しながらも、何とか着地に成功する、同時に飛び苦無、弾き散らすとその背後に、微かな気流の乱れを感じる 「そこかっ!?」 だがそれは『ミチル』のプチマスィーンだ。空気のゆらぎの規模で判別出来なくも無いが、経験則から言ってこの種の囮攻撃を仕掛けてくる場合、罠は三重以上に張るのが常套だ 案の弱手側に出現する『ミチル』・・・だが、『クイントス』はあえて右側面に切りつける (左は・・・映像だ!) 爆音は衝撃の後に起こった 強烈なソニックブームの中でしかし、交差させた二刀流に囚われた『鳳凰』を、クイントスは驚愕の視線で見ざるを得なかった 一振りは音速超過の衝撃と大質量に耐え切れず半壊したが、それでも尚刀としての形を保っている そこに、クイントスは対峙している当の神姫ともそのマスターとも違う、第三の強烈な執念を感じ、思わず剣を引いた 三度、軽いが鋭い金属音が響く 『鳳凰』を引き戻していなければクイントスは一瞬で四等分にされていた所だろう 剣速は勝っているかも知れない、が、反射神経が追いつかない ミチルの技はまぎれも無くクイントスの力量を超えていた だが不思議と絶望感が沸かないのは何故か? 我知らず、クイントスは口の端に笑みを浮かべていた・・・武に生きる戦士としての性、実に度し難い悪癖であろう だが、それを武装神姫にプログラムしたのは人間だ つまり、人間というものがそも度し難い闘争本能を有し、その代理行使者として作られたのが武装神姫だ (そういう様に作られたのだからそういう風に振舞うだけの事だ) マスターの為とか、栄光の為とか、そういうものはクイントスにとってはある意味不純物ですらあったかも知れない 先刻の一撃は、ミチルに致命打を与えはしなかったが、かすりもしなかった今迄に比すれば幾分か「まし」であった 日本刀で闘う相手に剣を使った「受け」を行わせただけでも、である 尤も、受け止められてヘシ折れていないのも、その後こうして立っているのも、結局『鳳凰』の御蔭といういささか情け無い側面もあったのだが 武器では、ある意味勝っていたのかもしれない 「むぅ、なかなか粘るのだ・・・」 國崎 観奈は少々の苛立ちを隠し切れなかった アルティ・フォレストと闘うのが取り敢えず当面の目的であり、ファーストランカーも数名参加しているこの大会において、他の有象無象はいわば前座・・・そう言い切っても決して驕りではない程度には、『ミチル』の実力は確かだったからだ 加えて、『クイントス』は彼女からすれば無名でもあったし、マスターとの連携が良いとは決して思えなかった (・・・そういえば向こうのマスターは何もしていないようなのだ・・・) 今回、最初から空戦装備で出て来たクイントスに対して、川原正紀は一切の支援も支持も行ってはいない 実は普段からそうなのだが、当然その事実を観奈は知らない (何か企んでいそうなのだ・・・むむむ) 結局その慎重さが、却ってクイントスの助けになっているかも知れなかったが、明らかに疲弊しているクイントスを圧倒し切れないと考える程に、彼女は自身の神姫に対して不信を抱いてはいなかった 重い衝撃音と、鋭く耳障りな金属音が画面から響いたのは、観奈の思考がひと段落ついた瞬間であった 「!?」 鳳凰杯は全勝負バーチャルであり、現実や、次の試合にはその損傷も何も持ち越されるものではない だが、それでもその光景は彼女を焦らせるには充分足るものだった 「『ムラサメ・ディバイター』 が片方壊れてしまったのだ!!」 ミチルの反撃をいなした・・・いなしたというよりも、回避されると踏んで移動後予測地点を攻撃したミチルの攻撃に、クイントスが反応出来なかっただけに見えたが・・・クイントスは、最早画面越しに見ても判る程に凶悪な笑みを浮かべて、奇妙な文様の入った長剣を横手に構えた 『がぁッ!!』 横薙ぎに一撃。気流を大きくかき乱して、吹き飛ぶ様に後退するクイントス 深追いせずにその場に踏みとどまるミチル 『私に勝つ気が本当にあるなら・・・次の一撃で決めにかかる事を進言しよう・・・!もう二撃凡庸の攻撃を繰り出すならば、私はそれを見切るッ!!』 一瞬、ミチルが観奈を窺う様な表情を見せた 決闘ものの時代劇そのものの様な、馬鹿馬鹿しいまでに愚直なその挑発はしかし、観奈にとって好ましからざるものではなかった 「ミチル、そこまで言われて退く手はないのだ!真正面から切り伏せよ!!」 大きく頷くと、一気に駆け出すミチル。彼女は知らないが、シチュエーションとしては『クイントスVS司狼』の際の最後の相抜けの時と酷似している 否、厳密には既に試合内容そのものが酷似しているのだ・・・つまりはこの試合展開というのは『クイントスのペース』だったと言っても良いかも知れない・・・こちらも知らないが、少なくとも観奈は、これ以上クイントスに生半可な攻撃を仕掛ける事の危険性を感じていた 白影を引き摺りながら走るミチルと、蒼い矢と化したクイントスが接近する・・・剣速の相対速度は今大会屈指であっただろう がきぃっ!! 巨大なインパルスを伴ったクイントスの攻撃を、ミチルは破損した『ムラサメ』で受け止めた・・・一瞬後にはその残った部分も弾け飛び、ミチルの肩口にも『鳳凰』がめり込んだが、その瞬を稼いだのは紛れも無く今は亡き伝説の刀匠の意地であったろう・・・。そして、剣を解き放ったクイントスの頭部にもう一方の『ムラサメ』を滑り込ませる事は、それこそミチルにとっては一刹那の時があれば充分であった とはいえ、観奈には白化し始めたミチルを目の前にして、その勝利を信じる事は、ジャッジングマシンがクイントスの敗北を断定する迄難しかった こうして、『クイントス』の名がミチルと観奈の強敵録の中に刻まれたのである・・・残念ながら、川原正紀の名はその後ついぞ思い出される事はなかったのであるが 「満足かい?」 正紀ではなく、琥珀がそう語りかけた 「馬鹿な事を!敗北して満足する訳は無い!」 「その割には随分と嬉しそうだけど?」 珍しく悪戯っぽく、琥珀は笑った 頭をかく仕草。神姫にとっていかなる意味も無いその仕草が、彼女の照れを雄弁に物語っていた 「貴女の剣が、私をあれ程の強敵と戦わせてくれたのだ・・・感謝しているさ、どちらにも」 それだけ言って、“ALChemist”で買って貰った新品のマントを羽織って、クイントスは立ち上がる 「・・・決めたよ・・・来年度を私の槙縞ランキング最後の年にする事をな」 空を見つめるクイントスの寂しげな瞳に映っている神姫を、琥珀は既に知っていた 同時に、そこに映っていない者の中で、その内映る事になるであろう者にも、彼女は心当たりがあった (宿業か・・・僕はどれだけの数の戦士達の闘争と、その果ての姿を見る事になるのだろうか・・・) 同じくブースから出て来たミチルに駆け寄るクイントスの後姿を見送って、琥珀はその場を後にした 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ 鳳凰杯・まとめページ 注1 銃夢である。因みに筆者は「バイオレンスジャック」も好きである
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…… 「零牙、起きてください」 「む……ん。」 主に呼ばれて、我は目を覚ました。 いつもならばその立場は逆であるのに。 「珍しいですね、あなたより先に私が起きてしまうなんて」 「…面目ない、主。」 主はすでに外行き用の服に着替えていた、手には我の武装が入ったボックス。 今日はこの前知り合ったヒカルとのバトルロンドの予定があった。 主の家から一kmほど先に、神姫センターがある。 秋葉原などにある店舗ほどではないが、規模は大きい。 しかし、約束の時間より三十分も早く来てしまう主の癖のせいでヒカルのマスター氏は まだ来ていなかった。 ベンチに腰掛け、来るのを待つ主。 ここのセンターは順番などの関係で、バトルロンドは対戦相手と一緒に申し込む決まりとなっていた。 「遅いですね」 「主の来るのが早すぎるのかと。」 主の笑顔が一瞬引きつった。 「…一応、これでも気をつけている方なのですが…」 後に聞いたのだが、我が来る前は一時間以上前に待ち合わせ場所に居たらしい。 …… 十五分くらいが経過した。 六月中頃の暖かな日差しが、ガラス張り天井のホールに降り注ぐ。 見ると、主はウトウトと睡魔に襲われている最中だった。 誰にでも敬語を使うのと、少しのんびりしているのが主の特徴だか、寝てしまってはヒカルのマスター氏に悪いし。 万が一置き逃げに遭ったら我だけでは対処が出来ない。 「主、炭酸飲料か何かを買ってきましょうか?」 「あなたじゃ大変でしょう。私が行きますよ」 「主がここに居なければヒカルのマスター氏が困ります。それに武装していればその程度、持てます。」 主は少し考え 「…じゃあ、お願いします」 と言って財布の中から百二十円を取り出した。 我はそれを受け取り、自販機があるエリアに走りだした。 ~・~・~・~・~・~・~ ホールにある自販機は故障中で、炭酸を販売している自販機を探すのに苦労した。 見つけたのはバックヤード近くにある、薄暗く人があまり通らない場所でだった。 コーラを抱えて急いで戻ろうとした時 殺気を感じた。 圧縮空気が噴出する音と共に黒光りする物体が飛んできた。 武器は持っていない、飲料缶を盾にした。 ぷしゅっ 何かが缶に突き刺さり、間の抜けた音と共に中身が噴き出た。 我は缶を盾にしたまま、物体が引き戻されてゆく方向に声をかけた。 「…何者だ。」 言った先、ごみ箱の影から現れた影。 その体を漆黒に染め、存在しない青い薔薇を思わせる透き通った髪。 ベースが少女型である花型MMS「ジルダリア」とは思えない程、妖艶な雰囲気を持つ相手だった。 「"蒼穹の猟犬"…で合ってるわね?」 青く塗られた唇が動き、低く、抑揚の無い声を紡ぐ。 その体と同じく、吸い込まれそうな程深い緑の瞳が、我を見据える。 「"蒼穹の猟犬"? …そうだ。」 人違い…ではなさそうだ、"蒼穹の猟犬"とは以前アピールに使用した覚えがあるからな。 「ふぅ…ん。『瞳に瞳孔がある』のねぇ、前見た時は気付かなかったわね」 瞳孔? 我の目には"瞳孔"がある。Kemotech社に勤めている主の父親が、関係者に放出された試作品を貰ってきたからだ。 放出された『目に瞳孔がある頭部』の内の一つが我に使われている。 「…何の用かは知らぬが、バトルの申し込みならば表でやってくれぬか?」 中身の抜けた缶をごみ箱に放り投げる、壁に跳ね返り箱に入って行った。 ジュース代をフイにしてしまったが、まあ仕方があるまい。 そのままジルダリアの横を通り過ぎる…と 空気を切り裂く甲高い音、そして熱気を感じ咄嗟に後方へと飛びのいた。 胸甲の手首が斬りおとされたが、自らの腕は無傷であった。 ジルダリアの右腕に装備されている物に目を落とす。 カッターナイフの刃らしき物が背部コンバータにコードで接続されている。 刃は熱を帯び、紅く輝いていた。 「…ふん、工作用の電熱カッターを改造したものか…。」 斬り口から漏電している、電力の無駄なので胸甲の電源を落とした。 「当たり♪、当然金属も切断できるだけの出力は出せるわよ」 ジルダリアが子供の様に笑う、我が苦しむのを見たいようだな…。 そう思った瞬間、横一文字に斬りかかってきた。 胸甲に大きく切り裂かれた、気付くのか少し遅れていれば本体を切り裂かれていた所である。 ABS樹脂が溶ける際に発する臭気が鼻につく。 「さあ"蒼穹の猟犬"…零牙と言ったっけ?」 切先を我の頭に向ける、熱気が顔の近くまで来ていた。 「武器が無いと戦えないのかしら?少しは芸があるはずよね?」 ふ…む。 機能停止状態の胸甲を排除した後、どうするべきか。 先ほどの銛状飛翔体は背部ユニットと一体化しているようだが、そこを無力化するにしても武器が無い。 五寸釘の一本でも落ちていれば話は別だが。 「考える時間は終わりね、…始めましょう」 刃先を我の顔から離し、振りかぶる態勢で構えた。 さて…風はどちらに吹くかな? 刃先が頂点まで達した瞬間、硝子が割れる音に似た破砕音が響いた。 ふぅむ…我に吹いたか。 本来なら、我に向かって振り下ろされる筈のカッターの刃は、細かい破片となって散らばり床を焦がしている。 突然の事に動揺を隠せないジルダリア、まだ未熟だな。 「誰なのっ!?」 「ちぇえぇぇぇぇぃ!!!」 突然、視界に赤い何かが割り込んできた。 それと同時に目の前に居たジルダリアが五十センチ位奥に蹴り飛ばされていった。 赤い何か。 黒い素体に赤と白の装甲、緑の頭髪。 サンタ型MMS「ツガル」の姿がそこにあった。 しかも、我はそのツガルを知っている。 「ジュラーヴリク、何故お主が?」 「"正義は悪と紙一重"ってところかしらね」 ジュラがフォービドブレードを押しつける。 「…なるほど、"狩人"か」 「そう言う事、…ようやく起き上がったか」 ブレードを握ると、刃の部分が発光し始めた。 「時にジュラ、あのジルダリアの相手は我がしよう。お主は見ているだけでいい。」 「…"蒼穹の猟犬"のお手並み、久しぶりに見させてもらうわ」 さて、と。 リアルバトルは初だが、何とかなるであろう。 「我は零牙、蒼穹の猟犬なり。…ゆくぞ」 ~・~・~・~・~・~・~ 「ようやく乗り気になったわね!」 ジルダリアは銛を二・三本まとめて撃ちだした。 (剣の振りは…右斜め上六十七度からといったとこか。) 零牙は心の中で呟き、流れるような動きでそれを実行した。 振り下ろされたブレードに綺麗に弾かれ、金属音を響かせる。 あらぬ方向に飛んでいき、様々な場所に突き刺さる。 「嘘ッ!? 五ミリの鉄板を貫くのに!」 「ふっ!」 身をかがめ、クラウチングスタートの要領で床を蹴り飛ばす零牙。 一秒もかからずその距離を縮め、大きく振りかぶる。 「そのブレードにこのタイミング…」 風切り音、そして異臭。 直撃は避けたものの、ダーツ発射器を兼ねるリアパーツを斬りおとされるジルダリア。 「まさかあんたは!?」 「ハァッ!!」 右手の短刀で止めようとしたが、刃と刃がぶつかった瞬間短刀の刃が割れ落ちた。 「イリーガルハンター!?」 「当たりよ。…ようやく来た」 出入り口側から悠々と歩いて来た人物。 センター職員の制服に身を包み肩にはアーンヴァル、胸のネームプレートには「長瀬」と書かれていた。 「祁音遅い!」 「別に急がなくたってたも良かったみたいだしな、被害者はピンピンしてるし」 「くそっ!」 脚部ユニットのロケットモーターが点火し、飛び上がるジルダリア。 「逃がさないわよ…精密射撃技術をなめなさんな!」 両手で構えたホーン・スナイパーライフルが火を噴き、弾丸がジュビジーに襲い掛かる。 「ガぁッ!?」 正確無比な銃撃により右脚を吹き飛ばされ、バランスを崩すジルダリア。 「追え、ラスター!」 男の肩から飛び発ったアーンヴァルが、ジルダリアを追う。 本来の性能では考えられない加速で飛んでゆく。 「覚えていらっしゃい零牙! いつかまた会いましょう!」 曲がり角を曲がり、見えなくなった。 零牙はここで、ようやく息をついた。 「大丈夫かい?、零牙」 男がしゃがみこんで、零牙と視線を合わせて言う。 「長瀬氏、"狩人"だとは聞いてはおらぬぞ?」 「違法行為だから普通は教えないさ、それより一応検査をしよう」 我はメンテナンスショップの中にいた。 念の為に検査されているのだ。 主が長瀬氏から説明を受けている、傍らには忙しく歩き回るショップ所属の修理用MMS達。 …と、説明が終わり、主がこちらに来る。 「零牙、大変でしたね」 そう言う主の目は、この騒ぎの真実を知っている事を語りかけていた。 「心配を掛けてしまい、申し訳ありません。」 「大丈夫ですよ。…形人さんとヒカルさんに多少迷惑を掛けましたが、納得してくれました」 「二人は人が良いですからな…。」 …… ジュラの説明によると、あのジルダリアは以前我と公式戦で戦い、敗北した神姫だと言う。 マスターについては調査中で、今の所ターゲットは我だとしか判っていないらしい。 「神姫をあんなにしちゃうなんて、きっとマスターが病んでるのよ」 ややオーバーアクションで呆れるジュラ。 「ジュラ、そう言えばあやつの名は…何とゆうのか?」 「確か…んー。確か"ダイアトニック"って名乗ってたかしら」 「ダイアトニック…、音楽用語だな。」 「話は済んだかい?、二人とも」 長瀬氏が会話が詰まった隙を見て、話に参加してきた。 「祁音、アイツの脚の調査結果は?」 「公式戦なんて問題外の改造だね。フレームはチタン製で電熱カッターが仕込んである、並の神姫なら一蹴りで一刀両断だな」 「下半身電熱カッターって事ね、アイツ…」 「オマケに電圧が高いのなんの、あんなの外部電力無しだと二秒でバッテリー切れさ」 「あの…」 完全に置いていかれてる…どうしようか。 まあ、ひとまずは良しとするか…。 ~・~・~・~・~・~・~ 深夜。 某マンションのベランダで煙草を吹かす影ひとつ。 長瀬祁音(ながせけいん)は思案に暮れていた。 (目にはつけていたが…本当に立ち向かうとはね) 零牙の実力の凄さを改めて知り、それがこの町の"裏神姫"をどう動かすかを考えていた。 ここで言う"裏神姫"とは、長瀬が"動向が怪しい"と見た神姫をまとめた物であり、決して確実なものではない事を留意してもらいたい。 「キャプテン」 そう言って、アーンヴァルが彼の右肩に乗る。 「どうだったか? ラースタチュカ」 ラースタチュカは、首を横に振り 「駄目でした。規格外のロケットモーターを使用したと思われます」 「そうか」 「すみません…」 「仕方がないさ、待てばいいさ。また零牙に挑戦する時を」 「しばらく姿を現さないと思うね、私は」 ジュラーヴリクが話に割り込む。 「それまでヒマだなぁ…」 「本当なら、俺達が動くような事件など、起きてほしくないんだがな…」 そう言って、長瀬は銜えていたケントを床に落とし、踏み消した。 2037年、武装神姫を悪用した犯罪が増えてきているという。 そういった犯罪に、"同じ力で"対処する人達も居る。 しかし、それは別のお話である。 無頼4を読む 流れ流れて神姫無頼に戻る トップページ
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与太話5 : 参上! 正義の戦乙女!! 「この手が望むは強敵との勝負!」 鉛色のコートが虚空に靡く。 「C・S・Cに誓うは主の勝利!」 輝く双剣が映し出す絶対的な修道女の影。 「阻む黒雲切り開き、勝利を掴む古の血統ッ!」 機械仕掛けの脚が鉄の運命を踏み砕く。 「正義の戦乙女――」 見開かれた双眸が蒼き炎を灯した。 「エル参 「遊んでないで真面目にやってよエル姉!」 コタマが操るホイホイさん、巨大なガントレットを両腕に付けた【ファースト】の攻撃範囲から逃れ下がってきたメルに名乗りを遮られ、エルはプクゥと頬を膨らませた。 「せっかく徹夜で覚えたんですから邪魔しないで下さい!」 「徹夜!? そんなことする暇があったらコタマ姉の対策の一つでも考えてよ!」 言いつつ、メルは決めポーズのままつっ立っていたエルを抱えビルの影に飛び込んだ。直後、二人がいた場所を二発の弾丸が、空気を貫くようなゾッとする音を残して通過した。 「少し漫画で目立ったくらいで図に乗ってんなよコラァ!」 続け様、コタマはもう一体のホイホイさん【セカンド】に二人が身を隠した壁面を撃たせた。神姫の身長より長い大型対物ライフルで壁を粉砕できるとはいえ、この銃撃はエルとメルを狙ったわけではない。威嚇のつもりもなく、ただ、コタマは腹を立てていた。 エルが徹夜で読んでいた漫画をコタマも読み終えていた。漫画の中で目立ちに目立ったアルトレーネとは対称的に、ライト級神姫は小動物二匹がたった1ページ登場しただけだった。ハーモニーグレイスは前巻でオマケのような扱いだった。 コタマはライトアーマーという格付けそのものに不満を持っているわけではなかった。自身、ファーストとセカンドを除けば、装備品は姫乃お手製の修道服と糸を伸ばした二つの十字架だけである。 だがその扱いが許せなかった。漫画の中でライト級神姫達がまるで幼稚園児のように描かれていることが許せなかった。いや、百歩譲って小動物系はいい。コタマとは何の関係もない。だがハーモニーグレイスがそいつらと同じレベルで争っているのはどういうことか。小動物にシールを奪われ「その金ピカネコは私が狙ってたのにー!」とべそをかくハーモニーグレイスを見てコタマは漫画をゴミ箱へ捨てようとして、鉄子と喧嘩になった。作者へ苦情メールも送った。 そして第三巻が発売されたのが昨日のこと。再び漫画をゴミ箱へ投げ捨てようとして再び鉄子と喧嘩になり、苦情メールを数回送っても収まらない憤りをバトルにぶつけようと、エルメル姉妹からの挑戦を二つ返事で受けた。 「出てこいエル、メル! 来ねぇのなからこっちから行くぞ!」 故に、カバー折り返しに実写で掲載されるという破格の待遇を受けたアルトレーネを生で見て、憤りが収まるどころかより膨らんでいったのは詮ないことだった。 「やけに機嫌悪くないか、今日のコタマ」 貞方とタッグを組むという不愉快を極めた申し出だったが、エルとメルにああも真剣に頼まれては断り切れなかった。昨日発売された武装神姫の漫画を読んだエルとメルは漫画の後半で活躍した戦乙女型を見て「私(ボク)達はもっとやれるんじゃないか」と何の根拠も無い自信を持ったらしい。一人では無理でも、二人が力を合わせればドールマスターすら打倒し得る、と。 俺の隣で腕を組んでいる貞方はジッと筐体の中を見ている。 「背比、お前竹櫛さんと同じ弓道部ならコタマの弱点とか知らないのか」 「弱点? あー……そういえば」 「なんだ?」 「コタマってやたらとスマッシュ攻撃を使うんだよな。投げ技も一切使ってこないし、動きを読みやすい」 「スマブラの話じゃねぇよ! 神姫と何の関係あんだよアホが!」 「お前にアホとか言われたくねぇよクソが! じゃあお前がなんか考えろよ!」 放っておいてもバトルの状況は刻一刻と変わっていく。十数階建てビルの中へ逃げ込んだエルとメルを追って、コタマも壁を破って飛び込んでいった。 中の様子は別モニターに映し出される。ビルの内部は会社を模しているのだろうか、人が誰もいないことを除けば実在する事務所のようだった。狭いフロアに机や棚などの物が置かれている。人形二体を連れたコタマにとっては戦い難い場所だろう。 ビルの六階までコタマが上がってきたところで、エルとメルは勝負に出た。ファーストがガントレットでドアをブチ破りコタマが事務所の入口を跨いだ瞬間、エルがコタマの正面から、メルは背後から襲いかかった。ファーストとセカンドは壁を挟んで分かれ、コタマは両側の壁に阻まれ糸を自由に操れない。 待ち構えていたエルは最高速度で突進した。息を潜めていたメルはスカートの下から全武装を解放した。 だが、甘かった。 「うおっ!?」 ビルの側面の窓ガラスを突き破ってエルが飛び出してきた。反対側からメルも同じように出てきた。二人とも自発的にビルから離脱したのではない。そうでなければ、六階から落ちて受身すら取れず路上に叩きつけられるはずがない。 エルが割った窓からコタマが顔を覗かせ、ファーストとセカンドを連れて飛び降りた。 「おい貞方、今何があった?」 「知らん。状況からして、反撃されたのは確かだろうがな」 モニターには確かに、コタマを挟み撃ちにするエルとメルが映っていた。だが二人は直後にモニターから姿を消し、ビルの側面から現れた。 よろけながらもなんとか立ち上がるエルの前に、コタマは着地した。少し遅れてファーストとセカンドも降りてくる。AIを積んでいないはずの二体が何故綺麗に着地できるのかは、コタマにしか分からない。 「よォ大人気なアルトレーネ様。苦しんでるとこ悪いんだけどよ、さっきの名乗り、もう一回聞かせてくれよ」 メルはビルを挟んだ向こう側にいる。援護は期待できないが、一人で戦ってどうにかなる相手ではない。エルは剣と脚のパーツで路面を蹴り、コタマから離脱した。 「いいぞ逃げろエル! そのままメルと合――!」 しかし、エルの速度をもってしても、逃げることすら叶わなかった。 「『44ファントム』」 いつ見てもこの技は瞬間移動としか思えない。全速力で離れるエルの懐に一瞬で飛び込んだファーストは、咄嗟の剣による防御をものともせずガントレットを打ち込んだ。 自分の速度にさらなる加速を与えられたエルは、道路を飛び越え別のビル側面に叩きつけられ、力無く崩れ落ちた。 「エルっ!?」 「今だメル、本体を叩け!」 貞方のヤロウ、エルを囮にしやがった。だがファーストが未だエルへの攻撃の流れに乗って離れている今を逃せば勝ち目を完全に失ってしまう。業腹ものだが仕方がない。 ビルを回りこむのではなく中を真直ぐ突っ切ってきたメルは飛び出すなり、ありったけの武装を放った。次のチャンスが無いのなら、この瞬間で勝負を決めるしかない。 伸ばしたスカートとワイヤーがコタマへ届く直前、セカンドが持つライフルの銃身が間に割り込んだ。 「くっ!?」 「おっと危ねぇ。今のはワイアット・アープでも命取られてただろうぜ」 ワイヤーが巻きつきスカートに挟まれた銃身でそのまま、セカンドはメルを薙ぎ払った。ライフルの銃口がメルへと向けられる。 「じゃあな戦乙女。オマエらは先輩神姫への敬意が足りねぇんだよ」 後から聞いた話だと、メルはこの時「ハーモニーグレイスだってそんなに古くないじゃん」と呟いたらしい。 バトルを終えて、竹さん、貞方と三人でマクドナルドへ立ち寄った。テーブルの上では三人の神姫が例の漫画のことであれこれと議論している。先のバトルのことを持ち出さないのは良いことなのか悪いことなのか。 「そういや貞方、ハナコは?」 このところ大学でもあの健気なわんこ型神姫を見ていない。 「精密検査でメーカーに送ってある。昨日連絡があって、まだ時間がかかるらしい」 「ふうん、検査ってそんな時間かかるもんなん。コタマもいっぺん検査に出そうかね、ウルサイのが払えて丁度いいかもしれん」 竹さんはフライドポテトを一本ずつ減らしていった。ちまちまと妙に女の子らしく(いや女の子だけど)ポテトをかじるその姿はトップクラスの神姫オーナーには見えなかった。 「竹櫛さん、コタマが使うホイホイさんの……」 「ファーストとセカンド?」 「ちょっと見せてくれないか」 いいよ、と竹さんは気軽にトートバッグからハンカチにくるまれた二体を取り出した。今まで無造作にバッグの中に入れていたらしい。益々竹さんのオーナーっぷりを疑ってしまう。俺もエルの装備を筆箱に入れてるから他所様のことを言えたもんじゃないけど。 ちなみに貞方は専用アタッシュケースを持っている。クソブルジョワめ、先物取引に手を出して一日で破産しろ。 見せてもらったホイホイさんは、ごく普通のホイホイさんだった。ファーストは腕をガントレットに取り替えられているだけ、セカンドはもうそのまま害虫退治ができそうだった。 でも、この二体はバッテリーこそ積んでいるもののAIを搭載していない。動きはすべてコタマの糸で操られている。 「竹さん、コタマはどうやってこのホイホイさん動かしてんの?」 恐らくドールマスターを知る誰もが知りたい秘密だろう。思い切って聞いてみた。 でも質問が直接的すぎだろうか。貞方が「(お前、もう少し遠回しに聞けよ)」と目で言ってきた。でも竹さんはさして気にした風もなく、というより、 「さあ、分からん」 分からないらしかった。 「分からんって、竹櫛さんが用意したんだろ?」 「いーや、うちの兄貴に全部任せとるよ。メンテとかも」 「……そうか」 貞方がなぜか落ち込んでいる。きっと阿呆なりに思うところがあるんだろう。 哀れんでやろうとすると、ぎゃあぎゃあ騒いでいたエルに呼びかけられた。 「マスターマスター! やっぱりアルトレーネが一番だっきゃん!? にゃにするんですか鼻を打ちました!」 俺の元へ寄って来ようとしたエルの足を掴んで倒したコタマは、そのまま4の字固めを決めようとした。エルは鼻を押さえながらもそれに必死に抵抗している。 「オマエ今まで何聞いてたんだ! ハーモニーグレイスを差し置ける神姫なんていねぇっつってんだろ!」 「そんなわけありまっせん! どの神姫も平等なんです!」 「言ってることメチャクチャじゃねえか!」 「コタマ姉さんに言われたくありません!」 「二人はいいじゃない、漫画に出られたんだし……ボクなんて……」 小さな仲良し三人は俺達が店を出ると言うまで、俺達の意見を右から左へ受け流して自分の型の優位を主張し続けた。 オルフェ♡ カッコいいっス! 流石っす!! そう、今までの【武装神姫2036】は楽しくも、何かが足りませんでした。 その何かとはアルトレーネのことだったのです! ああ、オルフェのさらなる活躍を目にするのはいつになることやら…… 第四巻を楽しみに待ちましょう。 Wikiだと文の前に空白を置けないんですね。 知りませんでした。 15cm程度の死闘トップへ
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第7幕「意思の同調状態」 TEPY SAMURAIのボディーを使用してはいるが、コアパーツにはTEPY DOGの物を取り付けている。ならばTEPYで呼称するのであればその神姫はハウリンであろう。 例えその殆どを紅緒のもので武装したとしても、やはり顔がハウリンならばそう呼ぶのが妥当ではないか。 大本がどうであれ、判別する為の材料としてまずコアパーツを見るのであれば、いくらその個体の大部分がTEPY SAMURAI 紅緒だとしてもそれは紅緒になりえない。 結城セツナの所有する武装神姫、焔はそういう位置に立つ神姫である。 そのバトロイは、圧倒的で劇的な、そんな結果を伴って終了に向かっていた。 戦いには相性というものが少なからず存在する。簡単に言ってしまえばジャンケンの様なもの。 グーはチョキに勝てるが、パーには勝てない。 実際はそこまで単純な話ではないのだが、それでも相性というものは戦いにおいて重要だ。 そしてそれは何も相対する敵との相性に限った事ではない。 個体間に差異の大きい武装神姫であるなら、組む相手との相性もまた重要である。 ティキと焔の相性は、元々一つであった何かが再び出会ったのかと言う位良好であった。 M・D・U『シルヴェストル』を装備したティキの姿を見たときは、さすがにセツナも焔も驚いた。 今までのティキとは明らかに違うそのシルエットは、その変化に見合うだけの力を持っていることが窺い知れる。 決して洗練されてはいないのだが、そこには様式美ではない美しさが見て取れた。 一方焔は相変わらずオフィシャルな武装を組み合わせた姿である。それでも今までの装備とは違っていた。 外套を外し、黒き翼、悪魔の翼を装備する事をやめ、ツガルの背部ユニット、レインディアアームドユニット・タイプγに差し替えてあった。起動性能が落ちた分は、鎧の各所にスラスターを増設して補っている。 まるで武者なんとかみたいな有様ではあるが、そこにはある種の洗練されたまとまりが感じられた。 「索敵と援護射撃は任せて欲しいのですよぉ♪」 ゲーム開始直後、焔に自信満々でそう言ったティキは、その言葉を証明して有り余るほどの働きを見せる。 高速で移動し、位置をそのつど変えながらも的確に攻撃。その間にも次の敵を正確に察知する。 その援護を受けながら、焔は自身の得物、斬破刀“多々良”を振るい効率よく敵を殲滅していった。 焔もセツナも、正直二人の成長に驚いていた。もちろん焔は自身の中にある海神の残したデータと比べて、ではあるが。 わずか二月の間に性能任せの力押しはなりを潜め、的確な状況判断の下に行動する姿がそこにはある。 それでも武装は多分に趣味的ではあるのだが。 目の前の敵は、ティキの援護の甲斐もあってか一刀の下に両断された。 焔は初めて実感として経験するティキとの協力プレイに、今まで神姫相手に感じた事の無い頼もしさを得る。 「?」 神姫相手に始めて感じる感情。でもその感情そのものは、決して初めてのものではない。 それに思い至り、焔はしばし動きを止める。 「うに? 焔ちゃんどうかしたのですかぁ?」 不意に動きを止めたパートナーにティキは声をかける。 「あ、あぁ。大丈夫……」 ごく普通の、相手を気遣った当然過ぎるやり取り。 当たり前の反応で、当たり前すぎる行動。 お互いに信頼しあう間柄で交わされる、他愛も無いもの。 だけど だけど……? 『結城さん』 セツナにのみ届けられる雪那の声。インカムを通した、極めてパーソナルな通信。焔にも、ティキにもその声は届いていない。 「……何?」 ゲームが終了した訳でもなく、実際にまだお互いの神姫は他の敵と戦っているが、この調子ならしばらく指示を出す必要もなさそうだった。 実は雪那は最初からこのタイミングを狙っていた。焔やティキに話を聞かれない時機を窺っていたのだ。 『いや、僕で結城さんの力になれるのかな、って』 あまり頼りになりそうには聞こえない、弱気な口調。 セツナは少しだけ逡巡する。 そして少しだけの決意をこめて、言葉を紡ぐ。 「うん、ありがとう。……唐突なんだけど、実はもう海神はいないの」 『…………』 インカムの向こうで、息を呑む音。 「それで、新しく焔を起動したんだけど、私あの娘にどう接して良いのかわからなくて、ね」 『……うん』 「別に、海神の代わりにあの娘を起動させた訳じゃないわ。言い訳に聞こえるかもしれないけど」 わだかまっていた感情が、決壊しそうになるのを感じる。 頭の隅にいる冷静な自分が「無様」と言っている。けど、感情が迸るのを止められない。 「ねえ、私があの娘を好きな様には、あの娘は感じてくれないのかな?」 普段とは違う、少し幼い口調。 「私、焔に嫌われてるのかな?」 声に湿り気が混じる。 常識は「神姫がオーナーを嫌う事はありえない」と告げる。が、焔はあの海神のCSCをそのまま使っているのだ。ならば焔が「オーナーに対して好意的な関係を望む」とは限らない。 海神とは、そういう存在だった。 だから だから……? だけど自分はご主人にその当たり前をしていたのか? だから自分は焔を常に信じ切れなかったのか? ただ決め付けて ただ望みすぎて 本当の意味で、自分の事だけしか思いやれずに 私は ワタシは 『きっと色々思い出して、考えたらそんな事無いってわかるはずですよ』 インカムを通して聞こえる優しい声。 『嫌っている相手のために何かを頑張るなんて事は、人間だって神姫だって出来っこないんですよ? だったら、焔も結城さんも、お互い好き合っているに決まってます!』 そうだ。焔が何で海神のデータを欲しがったのか。 それは焔自身の為ではなかったのだと、セツナはようやく思い至った。 きっとそれは私の為。 「あ……」 「? やっぱりどこか怪我でもしたですかぁ!?」 ようやく焔は思い至る。 「違う。そうじゃない」 ワタシに海神のデータを入れることになんであれだけ躊躇したのか。 それは焔が海神では無いから。焔は焔でしかない。焔にしかなれない。 だからセツナが見せたあの躊躇は、海神の為ではなかった。 それはきっと焔の為。 「本当に、嫌われて無いかな?」 答えは見つかったのに、わざと甘えるように聞く。 自分以外の誰かに、口にして欲しくて。 『当たり前です。こういう言い方は失礼なんですけど、二人とも相手を気遣いすぎなんですよ。……不器用すぎです』 雪那は笑う。 その笑い声も耳に心地よい。 『だから結城さんはいつかのゲームのときに海神に見せた、あの誇らしげな顔で焔を迎えるだけで良いんです』 私はその時どんな顔を彼に見せていたのだろう。 初めて雪那と出会った時の事を思い出しても、うまく思い返すことは出来ない。 『海神の事、信頼していたんでしょ? そして焔の事も信じたいんでしょ? なら考えすぎないで、感じたままに接すれば良いんですよ』 言われて初めて自覚する。 私は海神をパートナーとして信頼を寄せていたんだ…… セツナの目には一筋の涙。 焔、ごめんなさい。私は海神をちゃんと大切に思っていた。 次いでもう一方の目からも涙が零れる。 そして焔。私、貴女の事も負けないくらいに大切に思ってる。 友人として新たな関係を築かねばと、そこに囚われすぎていた。本当はそんな事を深く考える必要など無かった。 「いきなりで申し訳ないが、ティキ。ワタシは焔以外の誰かになれるだろうか?」 振り返り、焔は真っ直ぐティキの目を見る。 「? 焔ちゃんは焔ちゃんなのですよぉ? 焔ちゃん以外の誰かになんて、なっても意味が無いのですよぉ~♪」 意味が解らないながらも、ティキははっきりと答える。 「ティキはそう思うのですよぉ♪ それに……」 ティキは少しだけ間を開ける。 「海神ちゃんも、そう言ってたのですぅ☆」 焔の内に海神の『記録』はあっても『記憶』は存在しない。だから、その『記憶』は焔の中には存在しない。 だが だが、海神がそう言ったのであれば、それはセツナの意思と同じなので、それは焔の中にも受け継がれているのではないのか。 思い至り、そして焔は思い出す。 『正式名称の方はただの飾りだから』 その言葉は一番初めにセツナが言った言葉。 それは何よりも焔が海神とは違う存在だと宣言していた。 セツナが焔に望む事。それは焔が焔でいるという事だった。 「は……ははは。ワタシはただの飾りに振り回されていたのか」 到ってみればその答えはあまりにも単純で。 ゲームの最中だと言うのに焔は声を上げて笑った。 最初から、セツナと焔はお互いを思いやり、大切に思っていた。 そして、だから、どうしても、どうしようもなく、すれ違ってしまった。 絆は初めから判りやすい位に堂々と存在していたのに。 「『ありがとう』」 セツナは雪那に 焔はティキに その同じ刹那に同じ言葉を送る。 雪那は照れたように笑い ティキは満面の笑みを浮かべて 『『まだゲームは終わって無いですよ』ぉ♪』 「そうね」 『その通りだ』 そう、まだゲームは終わっていない。 『敵機確認したですよぉ~♪』 そういうなりティキは再び空へと舞い上がる。 そのティキを確認することなく、焔は迎撃体勢に移った。 セツナと焔はやっとスタートラインに立つ。ゲームは、これから。 トップ / 戻る / 続く
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神姫ちゃんは何歳ですか? 登場人物&登場神姫設定 登場人物 香田瀬 健四郎 (かたせ・けんしろう)22歳 本編の主人公。大学でロボット工学を専攻していたところを水那岐にスカウトされ、大学を中退して國崎技研へと入社する 所属は技術部1課。入社時に頓挫していた「白雪姫計画」を完成へと導いた功労者 所有する神姫「ユキ」を家族として接し、甘すぎる生活を謳歌している幸せ者 斗小野 水那岐 (とおの・みなぎ) 27歳 國崎技研技術部部長にして國崎技研の所属する斗小野グループの会長の孫娘 女子高生にしか見えない容姿とノンビリとした言動からは想像出来ない程の切れ者 人形師として有名だった國崎氏を説得し、國崎技研を設立させた立て役者でもある 健四郎の才能を見抜き、学生だった彼を当時頓挫していた「白雪姫計画」の実現の為にスカウトした 本来なら専務以上に就任しているはずだが、本人の「…部長って…いい響き…ですよね…」との発言により部長となっている。が、実際は社長以上の発言力がある 最近コスプレにハマってるらしい 愛澤 祐太 (あいざわ・ゆうた)25歳 健四郎の同僚。入社時期は同じだが、大学を卒業してからの入社な為、年上である 元々1課に属していたが、「第一期白雪姫計画」終了後、自らの提唱する「神姫と人とのコミュニケーション」を実現するために6課を設立した 新道 皐月 (しんどう・さつき)20歳 技術部1課に所属する健四郎の後輩 強烈なマシンガントークを繰り出す為、ツッコミチョップで失神させられること多数。微妙に不幸 健四郎に惚れ込んでいて、いつかお嫁さんにしてもらうことを夢見る乙女。ついに恋人に! 健四郎の恋人としてユキを認めている数少ない人(会社の人も殆ど認めているが) 以前は営業3課に所属しており、その頃は香田瀬を神姫の敵と嫌っていた。しかしムツキを通じて関わっているうちに、自分でも気付かないうちに香田瀬の本質を理解し、惹かれていっていた 南山(みなみやま)25歳 健四郎の同僚。名前を覚えてもらえない可哀想な人 國崎 観奈 (くにさき・かんな)12歳 國崎技研の社長、國崎悠人の娘 黒葉学園中等部に編入した 非常に明るくて活発。水那岐に懐いている 健四郎に思いが伝わり恋人になった 時代劇が好きで、それが言動にも現れている 國崎技研専属マスターでもあり、NY大会を制し世界ランキング72位になった実力者 永守 瑞歌(ながもり・みずか) 技術部2課所属。神姫用システムキッチン「グレーテル」の開発責任者 新道の技術1課への移動を推薦した一人 那俄世 良介 (ながせ・りょうすけ)30歳 技術部4課所属。源八郎の親戚筋 特殊武装を得意とするが、レギュレーション違反で使えない物が多い。主に警察に卸す対神姫犯罪用の特殊装備を制作している 三都衣 太牙 (みつい・たいが)29歳 技術部5課所属。衣装を作らせたら彼の右に出る者は居ないと言われている しかし、その衣装のデザインは彼に趣味に偏っている 香田瀬のそっち方面の師匠でもある 富士田 利之 (ふじた・としゆき)33歳 営業部部長。昔は相当モテたらしい 富士田 亜果梨 (ふじた・あかり)33歳 営業3課課長。利之の妻 國崎 悠人(くにさき・ゆうと)38歳 ※未登場 國崎技研の社長。元々は代々伝わる伝統工芸である人形を創る「人形師」であったが、水那岐に説得・出資されて会社を立ち上げた モノ創りにはこだわるが、基本的に大ざっぱな性格で、それが社風にもなっている 病気の妻、魅鈴(みすず)と元気一杯な愛娘の観奈(かんな)を抱える苦労人 那俄世 源八郎 (ながせ・げんぱちろう)享年88歳 ※未登場 現代に残る名刀工の家系の一人。昨年この世を去った。彼が作った刀のうち、特に優れた物は「ムラサメ」と呼ばれ、その切れ味はガーベラストレートさえ凌ぐ程だという 昨年に観奈の為に二振りの斬姫刀を鍛えそれを授けた。これが彼の最高傑作となったという。その切れ味は彼女の神姫の技量と相まって、切られたことにさえ気付かないと言われている。 今は息子源九郎が、師を超えるべく厳しい修行に励んでる 九羅侘 小百合 (くらた・さゆり)12歳 幼稚舎から黒葉学園に通っている少女。観奈の黒葉学園での最初の友達 立花 圭祐 (たちばな・けいすけ) 16歳 黒葉学園高等部2年・神姫競技部部員 次期部長候補の一人とも言われてたが、鳳凰カップに出場した5人のリーダーとして参加したが、全員予選落ちという結果にその地位が危ぶまれている 斉藤 (さいとう) 16歳 黒葉学園高等部2年・神姫競技部部員 腕は良いのだが、気の弱い性格が災いして立花にいいようにコキ使われている 内藤と工藤と合わせ「三藤トリオ」と呼ばれていたが、近接型の斉藤と違い射撃での支援を得意とする内藤と工藤に出世で置いて行かれてしまった 佐渡 魔琴(さわたり・まこと)13歳 黒葉学園中等部2年・神姫競技部部員 わがままでお調子者 腕は抜群に良いのだが、お調子者な性格が災いして立花におだてられていいように使われている よくミシオに窘められているが、反省が見られない 登場神姫 ユキ(マオチャオ型) 本編のもう一人の主人公。実験用素体として健四郎から様々な仕打ちを受けてきた可哀想な神姫 その後色々あって健四郎から認められ、家族として迎えられ、現在は恋人となった えっちを積極的にはしたがらない割りに、攻めるのが好き 事故で大破した為、素体を換装されている 純バトル用フレームパーツ「白雪姫シリーズ」をフル装備したその体は、主に健四郎との愛の確認に使われている 再生の際使われた素体がヴァッフェバニーの物だった為、通常のマオチャオとは異なり標準神姫サイズとなっている マイちゃんのもう一つの顔(M属性)を、愛澤以外で知る唯一の人物となったw ティール(ティグリース型)剣王(真鬼王)ファロン(ウィトゥルース型) 通常時 武装状態 武装分離状態 ティール 香田瀬の新たな神姫。起動前の事故で素体が大破してしまった為、『タブリス』へと換装された 香田瀬を父親と認識している。また、ユキ、ムツキ、ミチル、皐月、観奈、水那岐をママと呼び、花乃と火蒔里をお姉ちゃんと呼ぶ 多くののティグリースに見られる性格とは異なり、物静かな性格をしている バトルスタイルは銃撃メインであるが、ガン・カタのようなスタイルでの素早さを生かした格闘戦も得意 短時間なら炎機襲を使って飛行も出来る 必殺技は全火器による一斉射撃『ファイナル・シューティング』 ファロン 香田瀬の新たな神姫。起動前の事故で素体が大破してしまった為、『タブリス』へと換装された 香田瀬を父親と認識している。また、ユキ、ムツキ、ミチル、皐月、観奈、水那岐をお袋やかーちゃんと呼び、花乃と火蒔里をアネキと呼ぶ 多くのウィトゥルースに見られる性格とは異なり、少々大雑把な性格をしている バトルスタイルは二枚の防御シールドと重力制御による堅牢な防御、そしてサブアーム(炎虎甲)と怪力を駆使し7本の剣を操る超近接戦 離れていても炎虎甲を駆使し、一気に詰め寄る事が出来る 必殺技は『朱天煉獄堕とし』 ちなみにこの技を使えるのはビル☆サンダース(果糖機関)のランディを始め数人、真鬼王を装備しない状態で使えるのはファロンだけである ※事故に遭った際の電流のせいでか、二人は不思議な感覚で繋がっている 剣王(けんおう) 香田瀬がティール・ファロンと共に修復した武装 定番の組み替えにより単独で真鬼王形態となる事も出来る バトルフィールドに立てない香田瀬に代わって二人を守るのが役目。名前の「剣」は健四郎の「健」と掛けている 頭部にはぷちますぃ~ん程度の知性を持つAIが内蔵されており、会話も可能。分割時には各パーツに設けられた簡易AIによって独立して二人をサポートする 主な強化点は、各パーツの郡体ネットワークシステム、搭載バッテリーの変更、電磁ドライブの強化(超電磁ドライブ化)、炎虎甲への防御シールド発生装置の追加である バトルのサポート時には分割して『炎機襲・弾撃』と『インパルス・ディフェンサー』となり、二人を守る 背面武装は分離して支援機として使用可能。シングル戦の時には、装備されなかった方サポートメカとして随伴させ、必要に応じて組み替えたりもする マイ(ハウリン型) 愛澤の神姫。口数が少ない。 黒髪ロングにカスタマイズされていて、主に青紫のリボンでポニーテールにしている 基礎フレームを白雪姫シリーズの廉価版「白雪LMシリーズ」に換装されている 剣術とぷちマスィーンズによる戦闘を得意とし、その方面のテストに使われる マスターである愛澤を「祐太」と呼び捨てにしている。が、勿論ラブラブである えっちになると性格が変わるらしい(M属性) ムツキ(アーンヴァル型) 新道の神姫。髪型はショート 非常に大人しく、バトル不可能なほどである その割りにえっちの時は積極的 飛行特性がズバ抜けており、その方面のテストで大活躍している 背中のブースターが通常品から國崎技研製のイオンブースターに変更されている マスターである皐月を「さつきちゃん」と呼ぶ マスター同様、健四郎の事が大好きであり、めでたく恋人となった ※作者注・最初は健四郎の事を「センパイ」と呼んでいましたが「健四郎さん」と呼ぶようになりました(皐月の台詞と混同してしまう為)。いちいち修正してageるのもなんなのでそのままにしてあります ミチル(ストラーフ型) ※画像は作者手持ちのパーツで再現されたイメージです。実際は多少異なります(翼とか空牙とか) 観奈の神姫。マスター同様、明るくて活発な性格。そして容赦無い しかしえっちの時は受け身だったりする 健四郎と繰り広げていたドツキ漫才は彼女の愛情表現だったりする。現在マスターと共に健四郎の恋人となった 「白雪姫シリーズ」に換装され、かつ6枚の白い翼を持っている為「白い翼の悪魔」と恐れられている ミラージュコロイドが備わっており、ジャミング無しで相手から「消える」事が可能 画像投影機能を使い残像を出して相手を翻弄することも可能 (現在作品中では未使用だが、画像投影機能を使っての変身も可能) 基本装備として國崎技研製のライトアーマーとブーツ、そして後述の『ムラサメ・ディバイター』を使用している サブウエポンとして『苦内』を10本程度携行する事も多い(超硬合金製の物と爆薬が仕込んであり時限装置で爆発する物の2種類) 「ルシフェル」と言われると怒る。(水那岐以外に)「ちるちる」といわれるともっと怒る ライダー系装備をした神姫がさんざん時間掛けて準備しライダーキックを放った際、「さんざん時間掛けてキックかよ!」とキれ、逆にキックを放ち真正面から相手を粉砕した話はあまりにも有名 斬姫刀『ムラサメ・ディバイター』 観奈命名の特殊武器。名前の由来は「なんかカッコよさげだから」 二振りのムラサメブレードとセンターポールから成る。ブレードはそのまま使ったり、柄を連結してツインランサー状にして使ったり出来る。本来の形態はブレードの刃を外側に向け平行に配し、それをポールで接続してブレードスタッフとする。ブレード基部はフレキシブルに可動し、変幻自在な攻撃を繰り出す事が出来る ぷちマスィーン『ジャガー』 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (新ジャガ.jpg) (写真は後述の『ネオ・ジャガー』) ミチルが使う犬型プチマスィーン。2弾発売後からずっとミチルと共に戦って来ている戦友 電子戦のスペシャリストで、ミチルの勝利を影で支える縁の下の力持ち 通常は小型四脚戦車のボディを持つが、現在は陽電子リフレクターのテストの為にやや大型のボディ(ネオ・ジャガー)へと変えられている このボディは、ビースト・ヒューマン・フライヤー・バードと4形態への変形が可能(フライヤー形態はジャガーと分離しても行動可能。バード形態はジャガーと分離しての活動のみとなる) ミチル同様ミラージュコロイドを装備。戦闘能力は無いが、情報収集能力が非常に高い 魔操剣『空牙』 (剣は紅い花の誇りとリンク) 鳳凰カップで対戦したクイントスに紹介して貰った魔剣匠「神浦 琥珀」に鍛えて貰った魔剣 刀身にルーン文字が刻まれたフォールスエッジの長剣に、蝙蝠の翼をイメージしたやや大袈裟な鍔を持つ 高速飛行能力があり、ミチルの意志により遠隔操作が出来る 剣自身も明確な意志を持ち、自立行動や会話も可能 「魔剣とはこうあるべき」という思考の元、やや威圧的な事を言ったりする。が、根はいい奴だったりする 花乃(かの) (ジルダリア型) 水那岐の神姫。普段は礼儀正しく大人しい性格 ただし、なんらかの理由により裏の高飛車な性格へと変わる事がある(ハイパーモード時は必ず) その原因はCSCの相性と言われているが、真偽の程は定かではない 基本的にデフォ装備で戦う 火蒔里(ひじり) (ジュビジー型) 水那岐の神姫。活発で明るい性格。自分の事を「ひじりん」と呼び、他人にもそう呼ぶ事を要望(強要)する 他人に変なニックネームを付けるのが好き 訓練中の事故により小破した為現在療養中。白雪LMへと換装されパワーアップ中。キュベレーアフェクションも形状こそ一緒だが、外殻は超硬合金へ置き換え、中身も一新しトータル的なパワーアップが図られる予定 砂姫(さき) (紅緒型) 神姫競技部部員・斉藤の神姫 鋭い剣筋が売りの侍らしい神姫 決して弱い訳では無いのだが、マスターの気弱さから強さを十分に発揮しきれない可哀想な所がある 神姫競技部の神姫には珍しく、斉藤に対し「仕えるべき主君」以上の感情を持っている ちなみに名前の由来は、作者が~姫って名前を考えてふと思ったもので、天獄の砂姫とは何の関係もない 立花の神姫 (サイフォス型) たぶん内藤と工藤の神姫同様、一発キャラのつもりなので名無し 本来はサイフォス型らしく剣術に秀でた神姫 特にパワーに優れ、並の相手なら防御した相手をそのままねじ伏せる事が出来る だが立花の作戦で重火器を装備させられる事が多く、その能力は搭載量の多さにしか生かされない場合も多い(射撃能力は並以下) 神姫競技部の神姫らしく、立花に対する感情は「仕える主君」止まりである ミシオ (ハウリン型) 神姫競技部部員・魔琴の神姫 普段は大人しめながらしっかりした性格から、魔琴におばさん臭いとか言われている(物腰が上品と言ってください) バトル時はGFFレジェンドガンダム流用の装備をしている (頭部は使ってない為、イーゲルシュテインは無い) 射撃、格闘共にこなすオールラウンダー 通常、そういうタイプは決め手に欠ける場合も多いが、ドラグーンを用いた戦闘により共に高いレベルを誇る 必殺技『ドラグーンストリームアタック』もトドメは相手に応じて射撃か格闘かを選択出来る ただし、この装備は膨大な電力を消費してしまう為、戦闘時間は短めである 目下の悩みは、せっかくドラグーンを隠しても、魔琴に叫ばれてしまう為バレバレになってしまう事
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「わぷっ……」 意識が戻った途端、口の中に何かじゃりじゃりとしたものが入ってきた。恐らく、風に舞い上げられた砂だろう。ステージ『砂漠』が故だ。 (口の中がざらざらする……) (今のは仕方ないとは思うけどね) 砂漠と言っても、地平線まで砂が続いているわけではない。ステージを囲むように瓦礫のようなもの――それもステージ『コロシアム』の瓦礫――が存在し、まるで朽ち果てたコロシアムの跡のようだった。またステージ中央には大きな砂丘があり、反対側は見えないようになっている。 (相手は忍者をイメージした神姫みたいだね) (土遁、砂隠れの術?) (いや、無いと思うけど……) 突然後ろから現れてバッサリ、なんてことが起こったり起こらなかったり。無いよね。 (相手の武装は、刀が二本だけ?) それだけで事足りる、ということだろうか? いや、あるいは防御に重きを置いているとか。 (なんにせよ、ボレアスで牽制射撃。たぶん無駄だけど) (わかった) 手にランチャーが現れる。刀が二本だけということは、相手はやはり接近型のクロスメイン。忍者型と言うことは、足は速いのだろうか? と言うことは、おそらくそもそも射撃など回避するだろう。そして最接近。うーん……。 (念のために両手にゼピュロス) (あ、そうだね) 両手に大きめの鉄甲が現れる。 これで準備は出来た。後は試合開始を待つだけ。 (相手は、リアライドみたいだね) シリアから送られてくる情報に目を通す。宮下さんと静というフブキ型の間には、並々ならぬ主従関係のょうな物が感じ取れた。多分、ライドシステムが発明される前から神姫バトルをやっていたのだろう。それ故のリアライドか。 その時、上空にスクリーンが現れ、試合の開始を告げた。 『Ready……Go!』 とにかくまず飛ばないと話にならない。私はバイザーを降ろし、空へあがった。 このステージは時折砂嵐が吹き荒れる。だからあまり長い間上空にはいたくない。風で煽られて墜落、なんてしょうもなさすぎる結末だ。 砂丘はあまり大きくなく、すぐに相手を黙認することが出来た。相手は試合開始から動いていないのだろうか? じっとしたまま動かない。 ロック範囲まで近付いても、動く気配がない。一昨日のアルトアイネスを思い出す。だが、あれとは違うのは、それが無気力からくる静止では無く、まさに明鏡止水がごとき立ち姿であることだ。 黒く、柔らかな和服を思わせるアーマー、その黒の中に浮かぶ紅いマフラー。そして手には曇りのない刀。 まるでそこでそうあるのが当たり前なように、あるいは初めからそうあったかのように、静はそこにいた。 (駄目で元々……!) 空中で静止し、ボレアスを構える。銃口を向けられようが、その頬はピクリとも動かない。 引き金を引く。銃口から放たれた光の帯は、真っ直ぐ静へと向かっていく。 が、そのエネルギーをまるでそこに飛んでた虫を払うかのような自然な動作で刀を振り、切り裂いた。 (あはは、なんかもうボレアスが信用出来なくなってきた……) (相手が悪すぎるだけ) 多分、2本ある内の1本だろう。対ビームコーティングでもしてあるのか、そんなところだろう。光学系の武器は全部アウト、結局はインファイトだ。 (とにかく攻めよう。フェイントをかける。エウロスを出して) (オッケー。ブースターは任せて) 両手に出した剣を前に構え、風に乗るように飛び出す。相手は未だに動かない。おそらく接近してきたところに一閃を決めるつもりだろうが、そうはいかない。 みるみる内に相手との距離が縮まる。私はエウロスを振り上げる。自然と足は前に投げ出される。そこで手を振り下ろす――フリをする。足のスラスターが起動し、私の体はふわりと上にあがった。これで相手の攻撃は避けられ…… (動いて……ない!?) 相手はボレアスを向けられた時同様、一切動いていなかった。 (ならっ) 浮かんだ時、慣性により僅かに前に進んでいる。つまり相手の真上。ならば取るべき行動は一つ。 膝を曲げ、落下と共に突き出す。これには反応した。 力を入れているとは思えないゆったりとした動き。相手は右手に握られた刀を真上にかざす。私の足はその刀を踏みつける形になる。 (っ!) 私はその時点で追撃を断念し、その刀を踏み台に後ろへ跳んだ。そこでようやく刀に力が込められていることに気が付く。 着地。そこで勢いを殺さない。バネにした足で大地を蹴り、姿勢を低くして相手に肉薄する。 「はっ!」 その体勢から右腕だけを逆袈裟に一閃。それは身を反らされかわされる。それは想定済みだった。 さらに右足を踏み出しながら、今度は左腕を体ごとあげる。それも後ろへ避けられる。これもわかってる。 あげた体を左に捻り、左腕を目一杯下げる。さらに右手で相手の刀を抑えながら左足を前に出す。体重を後ろから前に移しながら左腕を相手の眉間に突き出した。 「…………!」 しかしそれすらも、相手は最低限の動きだけでかわしてしまう。この場合、首だけを動かして。 「……見事です」 相手が口を開く。刀を左手に持ち換え、右手でエウロスをどかす。 「マスターの攻撃における体重移動、神姫におけるマスターの腕の動きに合わせたリアパーツの動き。とても見事です」 確かに攻撃の最中、アイオロスは行動の邪魔にならなかった。それはシリアがこっちの動きに合わせてせわしなく動かしてくれたおかげだろう。 「しかし……」 相手が右手を静かに刀の柄に添える。 「残念ですが力不足です!」 相手が刀を僅かに下にずらしながら力を込める。私も右腕に力を込めるが、相手は両手、こちらは片手。勝敗は目に見えていた。 相手が刀を押し上げる。こちらのエウロスは刀の鍔で引っ掛かり、結果的にボディが空くことになる。私はさらなる追撃を恐れて左手を動かそうとした。 「遅い」 次の瞬間、顎にかなり強い衝撃。それが相手の膝だとはこのときの私は気付いていなかった。 「くあっ……」 目の前がチカチカする。体を支えられない。何とか足を動かして体が崩れるのだけは阻止する。 「終わりです」 声が聞こえ、必死に求めた視界には、すでに相手の姿はなく。 私は体の中に冷たい物が通り抜けるのを感じた。 画面の中で、静が飛び上がるように樹羽の顎目がけて膝蹴りをかます。樹羽が左手を動かすのが見えたが、如何せん瞬発力はフブキ型の方が高い。見事に顎に膝が入る。樹羽は体勢を崩した。あれだけの衝撃だ、たぶん軽い脳震盪だろう。 観戦用のモニターに青い点と線が表示される。レールアクションを使って神姫のレーダーを封じる気だ。静が音もなく樹羽の背後に回る。そして、その背中には刀を突き刺した。うまくリアパーツの合間を縫っての一撃。クリティカルダウンだ。 (終わったわね……) ゲームエンド。まぁ、当然と言えば当然の結果だ。 宮下亘彦、そしてその神姫である静。彼らは神姫バトルが始まって以来からの古株。あまりにも年期が違いすぎるのだから。 (にしても、予想通りとは言え、樹羽は大丈夫かしら……) あまりにも呆気なく、とても善戦したとは言いがたい結果。いや、樹羽のような初心者にしては上出来な方かも知れない。 その時、宮下さんが静を回収しゆっくりと立ち上がった。どうやら連戦する気は最初から無かったらしい。 宮下さんが私の脇を通り抜ける。 「そう怖い顔するもんじゃねぇぞ」 顔に手を当てて初めて気付いた。あたしの顔は今、相当にこわばっている。 「ああいう成功続きの初心者にはな、一回強制負けイベントってのをやらせねぇと成長しねぇ」 「……それであの子が潰れる可能性があってもですか?」 「そんときはその程度だったと諦めるんだな。お前さん自身のためにも」 振り返ると、そこに宮下さんの姿はもう無かった。相変わらず音もなく消える人だ。 「あたし自身のため、ね……」 最後に言ったあのセリフ。あの人はどこまで知っているのだろう。まったく、前々から思っていたが、何者なのだろうかあの人は。 (ま、今あたしが気にすることじゃないわね) あたしは未だに筐体に座っている樹羽に駆け寄った。 第八話の1へ 第八話の3へ トップへ戻る
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{ルーナと沙羅曼蛇} クリナーレとパルカと一緒に走り続けながら次の場所に向かう。 両足の血液循環が早くなり心臓もバクバクと動く。 肺は酸素を欲しがりフル活動。 ヤッベェ、もう疲れてきちまったぜ。 「お兄ちゃん!あのシャッターて、もしかして!!」 パルカが言う先を見ると廊下の右側に大きなシャッターがあった。 パルカやクリナーレと同じ形に大きさも同じ。 違うと言えばデカデカと、シャッターに『Two』と書かれていたぐらい…。 いや、違う! シャッターが開いている! これはいったい何が起こったのだろうか。 俺達が来る前にシャッターが開いてるという事は…まさかすでにルーナは破棄されたのか!? クリナーレとパルカを援護させながら俺はシャッターに向かって走り中に入る。 「ッ!?…ヒデェ…」 シャッターの部屋の中は酷い惨状だった。 人間の死体がテンコ盛りだったのだから。 ある死体は内臓を地面にブチ撒き倒れていたり、またある死体は手足が無かったり頭が無かったり。 他にも酷い死体は腐る程あるが、これ以上の説明は不要だ。 しかしこれはいったい誰がヤッたのだろうか。 ウッ、あまりにもグロテスクだから気持ち悪くなってきた。 「あたしがヤッたんですわよ、ダーリン」 「その声はっ!?」 突如声がしたので聞こえた方向を見ると、そこには二刀のレーザーブレード持った血塗れのルーナがいた。 よかった…無事だった。 でもまさかルーナがこの死体の数分をヤッたというのか。 本人はそう言ってるし…本当にブッ殺したのだろう。 いや、これは『殺し』というより『皆殺し』『残虐』『殺戮』と言った方が正しい。 武装神姫一体でここまで人間を殺す事が出来るのは無理ではないのだろうか…。 やはりツバァイとしての能力かもしれない。 これでルーナが今までバトルした時に余裕綽々で闘えていた事に納得がいく。 でもここで一つ疑問が起きる。 クリナーレ、パルカと同じく拘束されていたはずだ。 いったいぜんたいどうやったのだろうか。 「あたしはシャドーと同じ能力がありますの。レベルは中の下ですが」 「シャドーと同じ…あ、そういう事か!」 ルーナに言われて解った。 シャドーというのはシャドー=アンジェラスの事で、能力が同じという事はネットワークシステムを支配できるという事になるのだ。 シャドーはそーいう能力があるのは知っていたが、まさかルーナにも出来るとはな。 そしての能力を使って自力で大きな試験官から脱出し、敵である人間を殺しまくったということだ。 「お前、滅茶苦茶に強いんだな」 「アインお姉様に比べればこの程度、ヒヨッコ並みのレベルですわ」 俺は右手の手の平にルーナを乗せて近づける。 血塗れになっている体を左手で拭き取ろうとしたら、ルーナが人差指に抱きついてきた。 「おいおい、抱きつかれた吹けないだろうが」 「嬉しいんですわ。ダーリンがあたしを助けに来てくれた事が…」 「当たり前だろ。それにクリナーレやパルカもいるぜ」 「あら、それは朗報ですわね。アンジェラスお姉様は…まだのようですわね」 そりゃそうだ、まだアンジェラスを助け出していないのだから。 でもこれで三人目を助け出すことができた。 しかもアンジェラスの次に強いルーナだ。 これでアンジェラスの所まで難なく行きそうだぜ。 「それは期待できなそうですわ、ダーリン」 「えっ!?それはいったいどいう」 俺が言い切る前に突如とルーナの姿消えた。 そしてルーナが消えた同時に後ろから人間の叫び声が聞こえた。 声が聞こえた方角はシャッターの外。 俺はすぐさまシャッターの部屋から抜け出す。 すると。 「沙羅曼蛇の舞!」 <…燃やし…尽くす> ルーナが武装した人間を燃やし殺していたのだった。 沙羅曼蛇の舞とは、使用者の神姫の周りに炎渦が取り囲み、神姫そのまま状態で蛇のように突進し、敵を斬刻む攻撃。 さらに火炎の炎によって敵を斬刻むだけではなく火傷させる自動追加攻撃がる。 通常攻撃の場合はある程度相手距離を保ちつつ、隙あらば一気に敵の懐に飛び込み近接攻撃する。 因みに剣を振るたびにレーザーみたいな炎が飛び出すので飛び道具としても使える。 ただしこのワザはかなり体力を消耗をするので普段は使わない。 でもルーナはなんの躊躇い無く攻撃した。 しかも人間に対して。 攻撃を受けた人間は死ぬか炎によって燃えながら焼死していく。 ウッ、人間の体が焼けた匂いが鼻につく。 イヤな匂いだぜ。 ていうか、いつのまに沙羅曼蛇を装備していたんだよ。 消えると同時に俺から奪ったとしか考えようがないがな。 「…フゥー。これであらかた片付きましたわね」 「ルーナ、お前…」 一息をついてるルーナに近寄るとルーナは苦笑いした。 「あたしは簡単に人間を殺すことができる神姫ですわ…気持ち悪いですよね…」 俯き悲痛な声だった。 どうやら俺が人間を殺す神姫が嫌い、だと思っているみたいだ。 いつも人をチョッカイだして笑うルーナがこんな風になるんなんて。 心境的に辛いのだろうか。 でも俺が応える言葉はハナッから決まっている。 「ルーナはルーナだ。例え人間をブッ殺す神姫だろうが、俺はルーナの事が好きだ」 「ダーリン…」 「それにシャドーみたくむやみやたらに人間を殺さないだろ。ちゃんとした常識があるんだからルーナの事を嫌ってりしないぜ」 俺は右手をサムズアップして、いつものニヤリ顔をルーナに見せる。 するとルーナは俯きから顔を上げて。 「あたしはダーリンにこんなにも愛されて…幸せ者です!さぁ、行きましょっ!!アンジェラスお姉様がいる所へ!!!」 ルーナが元気よく先導する。 どうやらルーナはいつも通りのルーナに戻ったようだ。 そして俺は戦闘に疲れきったクリナーレとパルカを胸ポケットに入れルーナの後を追う。 後は残り一人! 待ってろよ、アンジェラス! 「(c) 2006 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.当コンテンツの再利用(再転載、再配布など)は禁止しています。」
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人物 名前:高城・ミッシェル・千尋 13歳 性別:千尋 ニックネーム:総帥 一人称:私(わたし) 二人称:あなた、きみ 科学者レベル:マッドサイエンティスト 一応主役『高城・M・千尋』と略してよい ブカブカの白衣と大きなリボンが目印の、愛すべき総帥様 若年どころか幼年ながら数々の学問に精通し、博士号まで持っているという厨二病全開の設定があるちびっ子 性別の項目がおかしいのは、設定を考えているうちに作者がわからなくなってしまったせいである 「いっそ、性別不明で良いや」と考えてしまったが最後、後は読者の皆様の想像にお任せする 『ミッシェル・サイエンス』をたった一人で取り仕切る恐るべきお子様 神姫 名前:「本名は非公開だ」 戦車型ムルメルティア 階級:少佐 一人称:私(わたくし) 二人称:貴官(きかん)、貴様(きさま) 忠誠度:総帥の為なら死ねる 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の頼れる隊長、コードネーム『α(アルファ)』 帽子や眼帯など戦車型の基本装備を身に着けているが、衣服はオリジナルの軍服に身を包んでいる 千尋は特別なバトルのとき以外は指示を出さないので、実質彼女が全ての指揮系統を担っている 千尋に絶対の忠誠を誓っており、危害を加えるものは容赦なく(人間、神姫関係なく)KILLするつもりでいる 身内以外に対する言動は非常に高圧的。ただし敵対の可能性がゼロになれば(口調こそ厳しいが)面倒見が良い、頼れる指揮官 名前:「非公開だ…例外なく、な」 砲台型フォートブラッグ 階級:大尉 一人称:自分(じぶん) 二人称:君(きみ)、お前 面倒事請負率:かなり高め 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の寡黙な副長、コードネーム『β(ベータ)』 常にバイザーつきの砲撃用ヘルメットを目深に被り、表情がよく見えない 常に櫛や手鏡を持っているなど、実は一番女らしい性格だったりする 後輩への指導は主に彼女の仕事で、曹長と一等兵は彼女が指導した バトルは主にスナイパーキャノンによる精密狙撃とハウィッツァー(曲射榴弾砲)による広範囲爆撃を使い分ける 名前:「公表の予定は無いであります!」 火器型ゼルノグラード 階級:曹長 一人称:私(わたし) 二人称:あなた 語尾:~であります 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の少々ズボラな突撃兵、コードネーム『γ(ガンマ)』 これといった特徴が無い、作者泣かせの困ったちゃん 十分なキャラ立ちができてないせいで、影が薄くなりがち が、語尾のせいで突然会話に参加してもわかりやすい バトルスタイルは後ろは気にせず突撃あるのみというものだが、なぜか生還率は隊の中でトップ 軍人気質…とは程遠いお気楽能天気の寝ぼすけ神姫 名前:「非公開にしろと言われてます」 戦闘機型飛鳥 階級:一等兵 一人称:わたし 二人称:~さん 癖:トリップ、大きな独り言 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の想像力豊かな新兵、コードネーム『δ(デルタ)』 第一話、第二話と連続でメインを張っているが、主役ではない 外見的に特徴は無いのだが、トリップ癖とダダ漏れモノローグで起動から一週間という短い期間の内に強烈なキャラ立ちを果たした 初の空中戦力となるが、今のところバトル未参加なので実力は未知数 今後もエンジン全開で行ってもらいたい 名前:リュミエラ 兎型ヴァッフェバニー 階級:なし 一人称:あたし 二人称:~ちゃん、~くん ついやっちゃったこと:一等兵の拉致 千尋の所持する神姫の一人『特殊部隊』の狙撃、個人撃破担当、コードネーム『B(ビー)』 かわいいものが大好きで豪快なお姉さん 第二話での名前ばらしはわざとっぽい 好物は紅茶とお菓子 バトルは基本的に参加しないが、参加するときは本隊を陽動にして、孤立したものを狙撃するという非常に地味な戦闘スタイル もしくは、もっとも攻撃力の高い相手を誘き出す役目を担う かわいいものはどれだけ見てても飽きないようだ 名前:フェリシエナ イルカ型ヴァッフェドルフィン 階級:なし 一人称:私 二人称:個人名、知らない場合は呼ばない 悩み:豪快すぎる同僚 千尋の所持する神姫の一人『特殊部隊』の潜入工作、索敵担当、コードネーム『D(ディー)』 第二話でやたら喋っているが、本来は無口無表情 同僚のBによって本編中に本名が出てしまったために、キャラ紹介で非公開にできなかった 好みは和菓子に緑茶と、純和風 Bと同じく基本的にバトルは不参加だが、参加するときは潜入偵察と各種センサーによる索敵に徹する さらに必要があれば、拠点の破壊工作や罠の設置など、相手にとって地味な嫌がらせをする 自室の中と外で口数が極端に違う その他のキャラクター 砂木 丈助 34歳 性別:男 相棒:ルルコ(マオチャオ型) 一人称:俺 二人称:お前 相棒との関係:俺の嫁 『砂木探偵事務所』の所長、自称三十代半ばのナイスガイ 幅広いネットワークを駆使して『Forbidden Fruit』まで辿り着いたようだ 相棒のルルコに頭が上がらない ルルコ 猫型マオチャオ 相棒:ジョースケ 一人称:ルルコ 二人称:キミ 伏字:不使用 砂木の所持神姫…というより相棒、ファイル棚の奥も見逃さない 『Forbidden Fruit』の購入はこの娘の強い要望だったようだ 将来の夢は、冗談抜きで『お嫁さん』 企業紹介 ミッシェル・サイエンス 全十階建ての、中心街に立つには規模の小さいビル 千尋が経営している会社…会社と言っているが、働いている人間が一人しかいないため、実質自営業 どういうわけか国の営業許可が下りている 主な事業内容は、神姫のオリジナル武装開発と、神姫サイズの日用品や家電製品の製造販売 そのほかに、神姫用の特殊なボディも作っているが、こちらは発注を受けてから作り始めるオーダーメイド品。お値段も高額 さらに一般公開をしていない特殊なボディも作っているが、こちらは一体で豪邸が土地つきで買える値段になる 詳しい説明は下記を参照 秘密の地下室が存在しているらしい…… 製品紹介 素体 Michelle-001 unripe fruit (未熟な果物) ミッシェルの試作素体、専用コアパーツとのセットで提供 非常に軽く柔軟性に優れる反面、神姫素体としての基礎防御力がゼロに近いので、装甲を追加するなどの処置を取ってもバトルには不向き どうしてもバトルを行いたいのであればヴァーチャルによるものを推奨、なおかつ相当な熟練が必要(神姫、マスター共に) 非常に精密な技術で人間に『似せて』作ってあり、MMSの特徴である剥き出しの間接はなく、肌の質感はもちろん、神姫に必要の無いはずの生殖器まで精巧に作ってある パッと見ると1/10サイズの人間そのもの 食事が可能で、水分以外は体内で完全に分解できる 水分は発汗などで消費することができるが、貯蔵量を超えた場合は強制排出が必要 内臓器官や骨格は完全に再現できなかったため、『人造人間』とまではいかないが、「すでに神姫じゃない」と言っても反論の余地は無い さらに、思考も再現できなかったため、AIを純正のコアパーツからのトレースしている。 手持ちの神姫を当素体に移植することも可能 損傷、故障があっても神姫センター等での修復は不可能ですので、異常が発生した場合は当社まで連絡をしてください 武装は腕、足に換装が必要な装備と遠隔操作ユニット、大多数のリアユニットが装備できない 使用したいのであれば同社の本素体専用装備(別売り)を使用することになる 製作時にある程度ならば体系の変更が可能であり、注文の際にマスターの好みを聞いてから作り始めるオーダーメイド商品 制作期間は受注してから約二ヶ月かかる Michelle-002X forbidden fruit (禁断の果実) ミッシェルの特殊素体、専用コアパーツと衣服もセットで提供 Michelle-001の発展型であるが基本性能は同じである 最大の特徴は体のサイズが10倍だということであり、こちらは近付いても人間との区別がつかない 当然のことながら、神姫バトルに参加することはできない 見た目が人間そのものであっても、当然のことながら人間の医療機関で治療をすることができず、さらに神姫センター等で修理することもできない 異常のある場合は当社まで連絡をください こちらも製作時に体系の変更がある程度可能であり、注文の際に好みを聞いてから作り始めるオーダーメイド商品 製作期間は受注してから約四ヶ月かかる (※商品受け取りの際に質疑応答があることと、受け取り直後にデータチェックがあることを予めご了承ください) 神姫ヴァーチャルコミュニケーションシステム SVCS「にじり口の茶室」 人と神姫を同じスケールにして触れ合うシステム 専用ヘッドセットは全国の神姫ショップにて取り扱っている 神姫はクレイドルを介してシステムに接続、マスターは専用ヘッドセットを装着する事によってシステムに意識を転送する サイズは神姫側に合わせられるため、神姫とコミュニケーションをとる以外にも自身で武装の試用など、擬似的な神姫体験ができる ただし、かたや生身の人間、かたや武装を自在に操る武装神姫なので、パワーバランスは歴然としている システムに入る際は、自分の神姫との関係を一度見直してみる事 神姫との関係が悪いと、接続直後からボコボコにされることもあるかもしれない ……ちなみに、殴られるとちゃんと痛い 以下、話数が増え次第追加します 戻る